下男×病弱主
時は明治。華道の家である敷島子爵家に生まれた椿は正妻の嫡男でありながら、両眼が見えず、波濤の押し寄せる灯台に側仕えの老女千代と共に幽閉されていた。そこには側室の子であり、跡を取った2人の兄が気まぐれにやってきては椿を辱め、残虐の限りを尽くし、それでもそうやってしか椿と千代の生きる術はなかった。
そこへ下男が遣される。それは過去に敷島家に仕えた男で…。
ひたすらにしんどいです。閉じられた空間で慎ましく生きる椿に非道を尽くす兄。
主である椿は糧を得るために身体を差し出すしかなく、兄が飽きればそのまま捨て置かれるだろう極限にありながら、矜持を失わずに生きるのみ。
そこへ口のきけない十左がやってきて、過去の贖罪と共に誠実を差し出す。
小さな世界で荒波に揉まれながら、頼りなく、どこか全てを諦めてその誠実にのみ現在を委ねる。そんなお話です。
きっと、本当の椿はもっと気が強くて我儘で、明るい、可愛い子なのだろうけれど、そしてこれからは十左とそうでいて欲しいけれど、なかなかしんどい運命の子です。
明治期ということもあって、文体も読みにくく、余計に暗い印象を与えますが、色んな意味で辛抱強く読む本です。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説・ケ
- 感想投稿日 : 2021年4月16日
- 読了日 : 2021年4月16日
- 本棚登録日 : 2021年4月13日
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