漂流教室 (1) (小学館文庫 うA 11)

著者 :
  • 小学館 (1998年7月17日発売)
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感想 : 162
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楳図かずお先生の『漂流教室』、20数年ぶりに再読中。読もうと思ってた1月に『楳図かずお大美術展』でニュースに出てびっくり、さらにNHKの『むちゃマン』にも出てて、ヤマザキマリ先生が「サバラ!!」ってやってたのがかわいかった笑。

楳図先生の漫画はほとんど読んだことがない。小さい頃にいとこの兄ちゃんが『まことちゃん』を持ってて読んだ記憶はあるけど、グワシ戦闘機しか覚えてない!20数年前、親友が『漂流教室』を持ってて読んだぐらいです。親友の本棚には望月峯太郎やら松本大洋やら伊藤潤二やらありまして、今をときめく(悪い意味で)園子温の『自殺サークル』やら、コーエン兄弟の『ビッグリボウスキ』を一緒に観てた。つい先日亡くなった青山真治監督も、彼から教えてもらった。当時の趣味について訊いたら「サブカルにカブれたかった」と言われたけど笑。

『漂流教室』の細かい内容はまったく覚えていなかった。当時読んだ感想はとにかく怖くて、でも読みたくて止まらなかった。今読むと、楳図先生の絵柄でどうしても笑ってしまうところがあるけど、それでもページをめくる手はとまらない……私は漫画を読むのも遅いのに、かなり高速で読んでしまう。

この作品が少年サンデーで連載されていたのは1972年から74年までとのこと。オカルトブームって『日本沈没』や『ノストラダムスの大予言』が1973年なのに、その前年。これってすごくね?やっぱり重要な、すごい作品だと思う。
解説の川本三郎さん(といえば『マイバックページ』)の言にもあるけど、『十五少年漂流記』そしてゴールディングの『蠅の王』。映画版の再発DVDジャケットは楳図先生が描かれていた。ちょっとずれて、藤子F先生の『宇宙船製造法』(1979年)もこれらの影響があると思う。

学校ごとというアイデアがすごい。学校の校舎を舞台にできて、そこが良いし怖い。文庫版1巻はパニックになる子供、給食の関谷のオッサン、狂気の先生。まずは大人たちとの対決。しかしまだ戦後感が強い時代……泣く子供たちを見ると玉音放送みたいだし、関谷のオッサンは戦争に行ってたのかも。教室にバリケードを組むのは安田講堂のように見える。そして当然ながら核戦争に対する恐怖。

漫画を動画(アニメ)的に捉えると、楳図先生の表現はあまり動いてる感じがしない。走ってるシーンの足の表現とか、今見るとちょっとかわいらしくて笑ってしまう。序盤の咲っぺもかわいい。
それよりもやはり重要なのは、楳図先生の「ギャー!!」っていう例の顔。楳図先生といえばあの顔だよな……映画でも同じだけど、「恐怖の対象ではなくて、それを見てリアクションしてる側の顔を映す」というやつ(スピルバーグフェイスとかと同じ)。だから怖い。読んでいる私の方も一緒になって「ギャッ!!」「ギャーッ!!」と、あの顔になってしまうのだ……。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画
感想投稿日 : 2022年4月6日
読了日 : 2022年4月6日
本棚登録日 : 2022年4月6日

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