ロジェ・カイヨワ『戦争論』 2019年8月 (NHK100分de名著)

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  • NHK出版 (2019年7月25日発売)
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ロシアのウクライナ侵攻のせいだと思うけど、深夜に再放送されていたカイヨワの『われわれの内にひそむ女神ベローナ(戦争論)』。オーウェルの『ナショナリズム覚え書き』をたまたま再読していたことと、いまさらツイフェミのことを知って色々と考えていたので、とても実りの多い内容で良かったです。

内容に入る前に。
今は「戦争は悪いこと」だとされているけど、昔は悪いことじゃなかったんじゃないのか?と。人道的な面は除いて、よくわからないけど国際法で言うと1928年のパリ不戦条約以降か?というのが、見る前に思っていたこと。

内容を見ていくとやはりそうで、貴族・騎士や傭兵など限られた人が戦争をする時代から、フランス革命で人民の時代へ移り、その後のナポレオン戦争時代は「自由のための戦争」だった。「戦争をする権利」と言いかえてもいいのかも。
「銃は引き金を引けば誰でも撃てる」←ここよかった。日本だと、武士は殺人術の訓練をした特殊技能だったけど、幕末に西洋式の練兵を取り入れて平民の兵を増やしたことと同じ。

産業革命で、兵器も大量生産できるようになる。総力戦の時代、カイヨワが言うところの「全体戦争」。兵器はムダなもの……金属に運動エネルギーを与えて撒き散らすのみ(この番組を見る前に、ウクライナ侵攻でさんざん考えさせられたことだった)。スクラップ&ビルドで経済が回る。

そして「ナショナリズム」が出てくる……鳥肌が立った。「国家」というのは、概念のみで実体がないんじゃなかろうか?国土(領土)はある。国民はある。政府……これは微妙だけどある。様々なものを統合した概念が「国家」かな……と思いつつ見ていた。
ヒトラーの話になって、レニリーフェンシュタールのベルリンオリンピックの映画、『オリンピア』。20世紀は映像の世紀、映画が発明されて各国が利用した。『オリンピア』はオリンピックのアスリートの肉体、フィジカルが重要。実体がない国家という概念に、肉体というイメージを国民全体にもたせた(ナチスドイツ以外も、プロパガンダ映画はあらゆる国が作っている。『カサブランカ』やディズニーも、黒澤明も円谷英二も)。

カイヨワがテーマにしていたのは「祭り」。日本で言うと「ハレとケ」か?富野由悠季にも通じる。戦争と祭りとの関連性。

戦地に赴いて「光を見る」。だから喜んで死ぬ。そこに生きる意味を見出す……「なぜ生きているのか?」哲学の根本的な問い。これはやはり宗教で、ヨーロッパだからキリスト教。日本だと国家神道かと。もっと前は鎌倉武士の仏教はどうだったのか?あるいは、中国とかはどうなんだろうと思う。
宗教の神秘体験に近い気もするけど、今の目で見ると「脳内物質出てるんじゃね?」と。番組では触れられてなかったけど、戦闘薬としてドラッグ(主に覚醒剤)は昔から用いられている。

最後は核抑止力から非対称戦争について。

眠い中、深夜に4本(100分)連続放映だったので、あまり細かい点を覚えていない。しかし何度も繰り返して見たい、良い内容でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ドキュメンタリー・ライヴ
感想投稿日 : 2022年4月8日
読了日 : 2022年4月4日
本棚登録日 : 2022年4月4日

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