キャロル [DVD]

監督 : トッド・ヘインズ 
出演 : ケイト・ブランシェット  ルーニー・マーラ  カイル・チャンドラー 
  • KADOKAWA / 角川書店
3.70
  • (52)
  • (99)
  • (87)
  • (15)
  • (4)
本棚登録 : 596
感想 : 98
4

OPで、キャリーブラウンスタインの名前を見つけてギャーッ!!となりまして…出てるの知らなかった…ワクワクしながら出るのを待ってたんですが、なかなか出てこなくてですね、一番最後の方にチラッとだけ…ガーン…。
彼女が誰だかご存知ない方も多いと思う。そして、知らなければたぶん気づかないようなシーンです。彼女はレズビアンかつライオットガール勢なので、劇中では重要な意味を持つはず…と思ってたら、Wikipediaによると時間短縮のために出演シーンが大幅にカットされたそうな…。
彼女のシーンが長ければ、ラストシーンの意味がだいぶ変わって、キャロルに対する愛がより強固になると思う。これ、セル版には未公開シーンって入ってるんですかね…ぜひ観たいんだけど…彼女のシーンがもっと長ければ★5でした…。

トッドヘインズ監督作品は『ベルベットゴールドマイン』を劇場で観て以来なので20年ぶり。一連の作品や、キャリーブラウンスタインを出してくるあたり、人脈的にはマイクミルズやガスヴァンサントやスパイクジョーンズ、あとブクログの皆さんがお好きなミランダジュライとかと近いのかなと。

この映画を観たくなったきっかけは、『フォレストガンプ』の町山解説からなんですが、完全に勘違いしてて『キャロル』ではなくて『エデンより彼方に』の方だったんだと思う…。ただこの映画もかなり好きなので観てよかったです。

原作はパトリシアハイスミス。『太陽がいっぱい』の方で、あれもゲイがキーワードになっている話でした。
連続で観たもののテーマがたまたまカブることがよくあって、『人生はシネマティック!』『小さいおうち』の後がこれになるとは。

『小さいおうち』のレビューで書き足りなかったこと、私はあの映画に対して断定的に書いてしまってたんですが、同性愛ってそうじゃないと思うんですよね。それはたぶん異性愛もそうで、どこかの時点ではっきりと認識するんだけど、自分で自覚できない場合もあるのではと。
『キャロル』はテレーズが自覚する話。それと同時に、優柔不断でなにも決められなかったテレーズが明確な意思を持って、自立した女性へと成長する。

1952年のクリスマスから53年が舞台、『フォレストガンプ』の町山解説にもつながるけど、50年代って女性差別がものすごくあった時代。
そのような男性優位社会だと、女性が意思を持たない方が都合が良いわけです。
ハージ(カイルチャンドラー)にとってキャロルはまさにトロフィーワイフ。テレーズはデパートのおもちゃ売り場で働いてるけど、彼女が最初お人形の棚の前にいることが象徴的です。

後半の展開は『テルマ&ルイーズ』に若干似ているので、あの映画は『キャロル』の原作に影響を受けているんじゃないかなと思いました。

キャロル役のケイトブランシェット、昔はエリザベス1世とかエルフの女王様をされてて、最近では闇堕ちして死者の国の女王様をされてますが(女王様ばっかだな!)、序盤が妖しすぎる。私には美輪明宏とかデヴィ夫人みたいに見えましたよ笑。
トッドヘインズ監督が「主体と客体が云々」と言ってることの意味が私には難しくてよくわからないんですが笑、テレーズ主体で見るとこの映画は青春映画、テレーズが成長する話だけど、後半の主体はキャロルの方に移ってるのではないかと。「自分を偽る生き方では私の存在意義がない」と言わしめたのは、やはりテレーズの存在があったからなのでは。

テレーズ役のルーニーマーラがめちゃくちゃ可愛いのもこの映画では重要。ミアワシコウスカが演じなくて良かった。リスベットの時も可愛かったけど、この映画では本当にマジ天使ってやつですね。男も女もメロメロです。そしてエロい。

最近私はエロについて真剣に考えていて、どういう映画、描き方だと一番エロく感じるかというと、生活とシームレスだったらエロいなと思う。
この場合の生活というのは、それまでのふたりの時間の共有、つまり恋愛そのもの。これがAVとの大きな違いで、AVは行為そのものを描いてる、実用性のみなんです。
恋愛映画だとそれまでの感情を描いてるので、行為がエロい。
これはホラーやバイオレンス映画にも共通していて、生活に密着してるほうが怖い、感情を揺さぶられる。
『お嬢さん』もレズビアンなのにあまりエロく感じなかったのは、生活との密着感があまりなかったからかも。あとジャンル的にあちらはミステリでこちらは恋愛ものなのとか、トッドヘインズ監督は同性愛者なので、やっぱり気持ちが入ってるからかなとか。

それと、一番大事なのはこの映画はほんとにほんとにオシャレだということです。『ムーンライト』と並んでオシャレなLGBTもの。音楽もコーエン兄弟の映画や『スリービルボード』などのカーターバーウェルでとても良かった。
ファッションや色使いも最高だけど、50年代の車のデザインも良いですね。ぜんっぜん関係ないけど、『ブレードランナー』のポリススピナーって、シドミードは50年代の車のシルエットをトレスしてるんだなあと最近気づきました。あれフィルムノワールだから。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 恋愛
感想投稿日 : 2019年3月19日
読了日 : 2019年3月19日
本棚登録日 : 2019年3月19日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする