人類VS感染症 (岩波ジュニア新書 491)

著者 :
  • 岩波書店 (2004年12月21日発売)
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感想を一文で申し上げるならば、非常によくまとまっており、面白くためになる作品だったと思います!!

タイトルにもある通り、本作は人類と感染症との絶えざる闘いを歴史的事柄を交えて説明しています。病原菌が種としての生き残りをかけて宿主に感染し子孫を増やすという構図に、私はR.ドーキンスの『利己的な遺伝子』をふと思い出しました。

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例えば天然痘。死亡率は20%程度でクスリもなかった当時、人々にできるのはただ祈ることだけ。その威力はスペイン人ピサロが南米インカ帝国を滅ぼす際に、人口1000万人から130万人までへと激減させたほど。
そんな天然痘を予防することに成功したのは英国の医師ジェンナー。彼は近所の牧場で牛の病気の牛痘にかかった農夫たちが天然痘にかからないことに着想を得て、牛痘の膿を人に接種し天然痘への予防法への端緒となりました。

ルネサンス期に流行したペスト。英仏100年戦争をも休戦させたこの病気はネズミとノミを媒介し感染を増やし、人間に感染した後は空気感染で拡散していった。病気は人心を荒廃させ、流言飛語によって多くの罪のないユダヤ人が殺されたという。

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このように、かつてはシルクロードを伝って物品と共に伝播した病原菌は、大航海時代にはより大きな範囲を行き来するようになり、今や飛行機を使うことで数週間で世界中を伝播することが可能になった時代に我々は生きています。

こうした中で特効薬が未だになく母子感染がおこりうるAIDSや、妊娠中にかかると胎児に障がいをおよぼす可能性がある風疹、これと言った特効薬がない麻疹等々、我々が気を付けなければならない感染症は未だに数多くあります。その一部はワクチンを打ちさえすれば感染の危険から逃れられるという事であれば、やはり使用を考えるというのが一般的な厚生の考えであることは間違いないと思います。

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本作は、元々コロナワクチン接種をうつかどうかで迷ったことで買った本です。ワクチン接種には反対でしたので。
結局、手元に本が届く前にすでにワクチンは接種してしまいましたが、特効薬がない中でのワクチンの有効性や感染症の拡大が引き起こす悲劇について非常によく理解できました。
内容が非常にまとまっており語り口も優しいので、私も中学生の娘にも読ませてみたいと思っています。また、妊婦さんや若い女性は自分の体を守る上でも読んでみることをお勧めします。ジュニア文庫とありますがジュニアに独占させておくのがもったいないほど。感染症について具体的にはよくわからない私みたいな大人にも読んでほしい作品です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史・文化
感想投稿日 : 2021年10月22日
読了日 : 2021年10月17日
本棚登録日 : 2021年10月22日

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