聴者とろう者が分け隔てなく、ごく当たり前に手話を使って会話していた島がアメリカ北東部にあったことを、初めて知った。
舞台になった島には、聴者とろう者だけでなく、自由黒人、アイルランド移民、先住民、混血人がいて、島の中で多様な人々が(差別や偏見の中で)存在しているのが面白かった。特に、西洋の考えである「所有」と、ワンパノアグ族の「共有」が対立して、お互いの共存は厳しいところ。そんな中でも、ろう者人口の割合が高いことで、彼らが劣等感を持たずに生活していた事実が興味深い。
数年前はコロナ感染者なんて罪人のように扱われていたが、誰でも感染して当然になった現在では受容されている。感染が当たり前というのは医療上良くないが、あの当時の異常さ(感染者が何時にどの電車に乗っていたという報道とか)に比べると、人権的にマシになったのでは。的外れな例えかもしれないが、身近さというのは重要ではないか。
そんな島の社会に、ろう者の人口割合が低いアメリカ本土から来た人物によって、主人公と家族の人生が揺さぶられる。優生学的な考えや、無知による扱いによって苦境に立たされる主人公のサバイバル劇。児童書だけど、大人が読んでも読み応えのある良書で、子供の時に読んでいたかった一冊。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年8月19日
- 読了日 : 2022年8月19日
- 本棚登録日 : 2022年8月19日
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