たたかう植物: 仁義なき生存戦略 (ちくま新書 1137)

著者 :
  • 筑摩書房 (2015年8月5日発売)
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本棚登録 : 339
感想 : 37
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植物に対するイメージがくるりと一回転する本だ。木や花を見ると癒しを感じる!? 植物自身にとっては、とんでもない話で、植物は常に戦いの日々を送っているのだ。彼らは、とにかく自分のことしか考えていない。結果的に、共生になったり、人間の癒しになったりするが、そんなつもりは全くない。
①植物vs植物ーとにかく他の植物に先んじようと必死 
②植物vs環境ー雑草は実は弱いので、競争相手のいない厳しい環境の所へ逃れたのだ。
③植物vs病原菌ーこの章が白眉。常に病原菌との戦いをしているとは知らなかった。抗菌物質や活性酸素で防ごうとしたり、侵入された細胞が自死したりする。ポリフェノールやアントシアニンは自分が出した活性酸素を除去するためのものなのだ。
④植物vs昆虫ー毒を自分で生産して昆虫から守ろうとするが、昆虫はその防壁を潜り抜けようとする。その鼬ごっこなのである。そのせいで、特定の植物を好む昆虫が出てくるのだ。植物がわざわざ作った毒を体内に取り込んで利用するとんでもない昆虫もいる。
⑤植物vs動物ー被子植物が進化してアルカロイドという毒成分を持ったことにより、恐竜が滅んだとも言われている。哺乳類は味覚を発達させることで対抗しようとする。
⑥植物vs人間ー植物は毒で対抗しようとするが、人間はこれを利用したり、苦みを美味しいと感じたりする。しかし、人間のおかげで栽培が広がったりした。
あとがきで、著者は、人間はせっせと植物出現前の地球環境に戻そうとしていると言っているが、酸素のない、オゾン層もない地球だからね。皮肉がきつい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 植物
感想投稿日 : 2021年8月11日
読了日 : 2021年8月11日
本棚登録日 : 2021年8月11日

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