はなはなみんみ物語 (はなはなみんみ物語 ソフト版 1)

  • リブリオ出版 (2005年11月1日発売)
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感想 : 11
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ふたごの小人、はなはなとみんみは、南の森で家族5人で平和に暮らしていたが、北の森で小人を見たという話を聞いて、小人大戦争の生き残り探し、小人の未来をつなげようと仲間を探す冒険の旅に出た。かつて空中小人隊員だった白ひげじいさんは、旅の危険から身を守るため、悩みながらも戦争で使われた小人の魔法「空中とび」を家族に教える決意をする。戦争を知らないはなはなとみんみは、小人の歴史に驚きながら、魔法の力で数々の試練をのりこえていく。戦争の傷と記憶、そして強大な技術を、平和のためにどう伝えていくべきかを小人家族の旅を通じて描く冒険ファンタジー。

小さな小人たち、モグラや野ネズミ、ウサギの家族など、可愛らしい登場人物たちが次々に登場し、柔らかい言葉遣いでつづられる一見愛らしい冒険談だが、その根底には戦争経験と平和への道標という骨太のテーマがある。主人公はなはなはやんちゃだけれど勇気のある少年で、妹のみんみは少し怖がりだが心の優しい家族思いの少女だ。ふたりの純粋で前向きな明るさと、家族の愛情で、小人家族は恐ろしい羊びとに立ち向かい、未来を切り開いていく。しかし、この物語の真の主人公は白ひげじいさんではなかろうか。空中小人隊員として特攻をかけたものの生き残り、孤児となったひいなとたけびを育てることで生きる希望を見出した白ひげじいさんは、かつて小人たちが犯した戦争の責任を一身に背負って生きてきた。はなはなとみんみ、そして小人族に未来を遺したいという希望と、そのために戦争の引き金となった魔法を再び使うことになる苦悩は、いかほどものだっただろう。決して同じ滅びの道を歩まぬようにと家族に語りかける白ひげじいさんの言葉は胸を打つものがある。
戦後70年以上が経過し、家族の中で戦争を語り継ぐことが難しくなってきた中で、家族への愛に満ちた白ひげじいさんの言葉は、愛する者の幸せと平和を希求する切実さを持って、読者の心に届くだろう。ワクワクするストーリー展開と可愛らしい挿絵で、戦争物の重々しさを感じずに読むことができる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年8月13日
読了日 : 2022年8月12日
本棚登録日 : 2022年8月12日

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