注文の多い料理店 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (1995年6月22日発売)
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感想 : 85
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賢治さん祭り2作目はこちら。
これも賢治さんフリークの教授からお勧めされたもの。9つの短編童話集ですが、この順番で掲載された角川文庫版で読んで欲しいとの事でしたので、表紙も可愛いですし購入。

賢治さんはご自分の作品を『イーハトーブ(賢治さんの気分次第でイーハトブだったりイーハトーヴだったりするらしい)童話』と命名されているらしく、岩手県の事だそうです。
彼の物語は『鏡の国のアリス』等の昔から人気の架空世界と繋がっている設定なのだとか。

それを言い切ってしまう賢治さん、ぱねぇ…。(死語でしょうか)

私が小学生の折に、担任が今思えば賢治さんファンだったようで、これでもかと言う程に国語の授業で読まされたにも関わらず、あまり覚えていなかったので新鮮な気持ちで読めました。

賢治さんは『心象スケッチ』という造語を使ってご自分の詩集や童話を表現されています。
自然の中に一人立ちながら、自然から受け止めたこと、感じたことをそのとおり書いた(という設定らしい)作品、という意味らしいですが読んでいて納得しました。

どのお話を読んでも、都会に居る筈なのにまるで大自然の中にいるかのような錯覚を覚えます。

特に『狼森と笊森、盗森』はその最もたるもので、地質学者である賢治さんが、30万年強の時を経て出来た山々の様子を描いたお話。
その山に住む岩の視点からお話が語られるので、開拓にやってきた農民が手にしている鋤や鍬などの道具を『武器』と表現するなど、いかに自然と一体化して書かれたかが伺えます。

お気に入りは『どんぐりと山猫』と『烏の北斗七星』『月夜のでんしんばしら』
アウターゾーン、逢魔が時を思わせる時間に山猫から下手くそなハガキが来るというワクワク感。
鉄砲を怖がってる辺り、『注文の多い料理店』の山猫さんの親戚なのかな?

読み終えて、序文に書かれていた「(この物語の幾つかが)おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかりません」を思い出しました。

なった、なったよ賢治さん…。なんだか大自然、ひいては宇宙と一体になって銀河を走っている気分だよ…(銀河鉄道の夜は入ってないんですが)

都会の喧騒でお疲れの方、是非このイーハトーブで心身共に浄化され、自然と一体になっていた頃の私たちを思い出しましょう。
(名探偵のいけにえを読んでいるせいか宗教風味に…)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 古典
感想投稿日 : 2023年9月1日
読了日 : 2023年9月1日
本棚登録日 : 2023年9月1日

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