最近は電車内と自宅やカフェ等でゆっくり読む本を分けているのですが、こちは電車内で読了。
しかし電車内で読む内容ではありませんでした。
書店で赤黒い不穏なPOPがやたらと目立っていたのも納得です。大変刺激の強い内容ですが短編集なのでいつもの如くそれぞれに感想を。
『書食』
タイトルからお察しの通り、小説をちぎっては喰らい続けるお話。
食べた後に何が起こるかは書きませんが問題なのはその内容です。
良い子の皆さん、エレベーターはお手洗いではありませんよ!
主人公の気持ちが全く分かりませんが、もう異世界の扉を開いているので常識も覆っているのかも知れません。そもそも常識ってなんだっけ?こちらまでおかしくなりそうでした。
『耳もぐり』
新たなスタンド攻撃を受けたサラリーマンのお話。いやもう、スタンドと言うしか説明が付きません。
連絡の途絶えた恋人を心配して彼女のマンションに向かった主人公。彼がそこで出会った男から聞かされたのは耳の穴をこじ開けてその人の中に潜り込む男を見たという話。
薄気味悪い話がどんどん盛り上がっていき、最後は素敵な精神攻撃が始まって読者もスタンド攻撃を食らう始末。
ジョジョをご存知ない方はなんの事やらさっぱりだと思いますが、とにかく読んでいると何者かに精神を侵食されていく気分になります。
『喪色記』
今作の中では1番まともなお話でした。(決してまともではありません)
鬱病を患い休職した男が自分の右目から産み出した女性と幸せになる話です。自分でも何を言っているのかよく分かりませんが本当にこんなないようです。途中から、これは主人公が脳内で作り上げた精神世界に読者を巻き込んでいるのか?と混乱しながら読み進めていましたが、本人は幸せそうに人生を終えるので妄想だとしても良かったね、と心で手を合わせました。
SF的な要素もあり世界が急変する超展開には目を剥きましたがこれが1番まともな話です。この本はここからどんどん加速して行きます。
『柔らかなところへ帰る』
これはもう、なんと言えば良いのか…。
痩せすぎ位に細身の女性と結婚した男性が、バスで真逆のふくよかな女性に痴漢まがいの行為をされ、それ以来嫁に対して魅力を感じなくなり、ふくよかな女性に異常な程の性欲を持ち続けてしまうお話です。それはもう、仕事に支障をきたす程の性欲!
そして何故かバスの隣に座ってくるのは年齢は様々ですがふくよかな女性ばかり。これには理由があるのですが最後は「うぇあ?!」と変な声が出そうでした。
丁度このタイミングで隣のサラリーマンの方が寝てしまい、私の肩を枕にしかけていたので内容が内容だけに「ずっと寝ていて下さい!肩を貸すから!」と違う意味の緊張感に襲われていましたが、ここから肩にはサラリーマン、目の前には変態世界のめくるめく電車タイムが始まります。
『農場』
SFとホラーを足して割ったようなお話です。
28歳でホームレスになってしまった主人公が怪しい男に仕事があると持ち掛けられ、どうせ死ぬ事しか考えてないし、と軽い気持ちでついて行ったらどえらい強制収容所のような所。
発想がぶっ飛んでいらっしゃるのですが、何を栽培している農場なのかは伏せますが気持ちが悪いです。ホラーの怖さと言うよりは脳を掻きむしられるような感覚です。
主人公の行く末も1番可能性がありそして1番最悪な結末でした。
サラリーマンはまだお休み中です、お疲れ様です。
『髪禍』
新興宗教の新たな神の誕生の儀式のお話です。
最早不穏な空気ですが、失業した女性が一泊二日で10万支払うから儀式のサクラとして出席してくれ、と言われお金目当てに引き受ける所から始まります。ご多分にもれず、ろくな目に合いません。
髪を神と定義する教祖様は病で1度体毛が全て抜け落ち、その後ふっさふさの艶髪がもりもり生えて来て数メートルにも伸びた、というエピソードからして気持ち悪いのですが実際にこのお話が1番気持ち悪かったです。
最後は1周回って皆さんとても楽しそうで私も楽しい気分に…ならないよ!!なんでそうなる?!
あまりの展開に降りる駅を危うく乗り過ごしそうになりました。さようならサラリーマン。起こしてすみません。
『裸婦と裸夫』
ここだけは自宅で読んだのですが、心からそうして良かったと思いました。
ここまで長々とお読み下さった皆様、最後はヌーディスト祭り開催です。
電車内に突如として裸にネクタイのみの中年男性が乗り込み「どうせ脱ぐ事になるんだからお前らも脱げよ!」と老若男女かまわずタッチ。するとどうでしょう!皆さんすっぽんぽんに!そして感染するすっぽんぽん、ヌーディストパンデミック!!服を捨てないマイノリティー達の運命や如何に?!
頭がおかしくなりそうです笑。
ここでも超ド級の展開が待っています。あぁ、なるほどね…と思わざるを得ない強引さ。
長々とお付き合い下さりありがとうございます、これを読まれた方も踏み込んではいけない領域に立ち入ってしまった気持ちになられたかと思います。私もです。
帯の文言や有名なレビュワーさんの感想に納得しましたが、私は人には絶対にオススメしません。
『正欲』とは違った意味で覚悟して読んで頂きたい作品です。
- 感想投稿日 : 2023年11月21日
- 読了日 : 2023年11月21日
- 本棚登録日 : 2023年11月21日
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