死刑の基準 「永山裁判」が遺したもの (講談社文庫)

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  • 講談社 (2016年12月15日発売)
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感想 : 9
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恥ずかしながら、自分は永山則夫について、「貧困育ちの少年が4人を殺害した。獄中て作家になった」くらいの情報しか知らなかった。

永山則夫はちょうど自分の父母の時代で、母は彼より年上だが、東北の兄弟の多い家庭の下から二番目で、同じように集団就職で15で東京にきている。これまた同じように先に東京にいた兄を頼り生活し…母の上京物語は、オリンピックやらなにやら、楽しい話が多い。

事件を起こすまで、彼の人生は誰にも知られず誰にも気にかけられず、透明人間のようだった。
捕まってはじめて、彼はやっと人間になる。

獄中で結婚した和美さんという人がいることをはじめて知った。献身的な彼女との交流はあまりにも静謐で、ほんとうの人生を彼はやっと生きられたのだと思う。

最後の判決をむごいということはいけないのかもしれないけれど、意地を張らずに最後の日々を彼女と過ごせばよかったのに、と思わずにはいられない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2018年6月10日
読了日 : 2018年6月7日
本棚登録日 : 2018年6月7日

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