異郷日記

著者 :
  • 青土社 (2008年4月24日発売)
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感想 : 2
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 ほかの本を探しているときに見かけ、気になって購入。言語学、文化人類学の調査で世界各地で調査を行ってきた著者の、専門書ではなく、仕事を離れての旅を中心に綴った紀行文。冒頭『物心がついた頃から、自分は異境にいるのだという感覚が、わたしにはいつも付きまとっている。「わたしにとって、自分の皮膚の外側はすべて異郷だ」と、こんな言葉を機会あるごとに口にしてきた。』という一文から始まる子供時代のエピソードでは、人に囲まれる中でこそ孤独感をおぼえ、周囲との間につくった壁を崩さずに生きてきたと振り返る。『わたしの場合は、世間に歩調を合わせるよりは、余所者の目で周囲を観察したりするほうが、ずっと性に合っている。』といい、語学を学び始めたのも、国際情勢などに興味があったわけではなく、子供のころに虫や鳥や小動物に憧れて『本気で動物になりたいと願』ったのと同じ気持ちの延長上に、奇妙な外国語を話す人々の背後にも、『わたしには想像も出来ない未知の世界が隠されていると思った』からだと明かす。複数の大きく異なる言語の話者が出会ったときに生まれるクレオル語のことをはじめ、世界各国の人々の暮らしの風景と生活の知恵など、気になるエピソードが多数。1960年代のソマリアで、国内で話される言語はほぼソマリア語ひとつだというのに、文字がなかったために地域によって英語、イタリア語、アラビア語と読み書きの言語がばらばらで、郵便局の前に翻訳屋や代筆屋が並んでいたというくだりが印象に残った。言葉や文化に興味のある人は読んで楽しいと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ・コラム・実用書・評論・ノンフィクション
感想投稿日 : 2017年11月19日
読了日 : 2017年11月16日
本棚登録日 : 2017年11月19日

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