ビジョナリー・カンパニー4 自分の意志で偉大になる

制作 : モートン・ハンセン共著 
  • 日経BP (2012年9月20日発売)
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感想 : 107
5

ジム・コリンズのシリーズ最新作。
前作までの3冊でも、膨大なデータから引き出した丹念な考察には随分と魅了されてきたが今回も圧巻の一冊だった。
ベンチャー、中小企業など不安定な状態の企業から、長い年月の間に着実に偉大に進化していった企業を、同様な条件にありながらも偉大になれなかった企業と比較しながら、何がこの差を作り上げたのかを分析している。

今までの著作でもそうだったように、またまた独特の概念をひねり出している。

・10X型リーダー
狂信的規律、実証的想像力、建設的パラノイア、第5水準野心を備えたリーダー

・20マイル行進
米国大陸を横断するのには、調子が良い時も悪い時もそのペースを崩さず毎日20マイルずつ歩き続けた方が良い結果が出る。
企業経営も同様に、ある程度の目標を継続的にずっと続けた方が良いという考え方。

・銃撃に続いて大砲発射
最初から一点集中型で大きくやるのではなく、いくつも小さく試してみて、ここぞという分野を見つけたら集中して投資するというやり方。

・死線を避けるリーダーシップ
慎重に慎重を重ねて事前準備をした上で進める経営

・ズームアウト・ズームイン
何かの時にはさっと当事者意識から抜け出し、大きな視点で事象を捉えた上で改めてフォーカスして物事に取り組む。

・SMaC(Specific Methodical and Consistent)
長年拘り続けることをリスト化しておき、内容変更も少なく押さえて遂行し続ける。

・ROL(Return On Luck)
徹底的な準備をした上で、不可抗力で起きたイベント(運)が良運でも悪運でも、それを生かしてReturnを大きくする考え方。

など、どれも具体例を上げながら比較対象企業に当てはめて詳細に説明しているが一々、納得させられる。
例えば、MicrosoftとJobs復帰前のAppleなどは典型的な比較対象のペアだという。
Bill Gatesのやり方を想像してみても、この本で上げている概念に沿うところが幾つも思い浮かべられるし、その時期のAppleはまさに正反対を行っている。
IntelとAMDの比較も同様である。
ムーアの法則に拘り続けてイノベーションを実施し続けたIntelと、数々の幸運をまったく活かしきれなかったAMDの差は、丹念に追っていくとまさにこれら概念に当てはまるか否かなのである。

また、ひとつ、イノベーションに関する面白い考え方があった。
偉大な企業となるべくにはイノベーションで突出している必要は無いと云うのだ。
あくまで最低限のハードルであるイノベーションの閾値を超えれば良いのであり、それ以外の要素との組合せが偉大な企業への道筋をつけるのだと。
確かに大きなイノベーションを一発やった企業が、本当に偉大な企業として残っているかと言われればそんなことはないなと改めて認識した。

翻訳者の牧野洋氏があとがきで書いているが、ドラッカーの助言があったからコリンズは学者の道に進んだのだそうだ。
圧倒的な洞察力で社会の将来を考察したドラッカーと、膨大なデータ分析から偉大な企業の本質をえぐり出し続けるコリンズと、アプローチはまったく異なるがこんなところに接点があるのは面白いものだ。

ともあれ圧倒的な内容に今回も十分に惹き付けられた納得の一冊。
お薦めの良書だが、やはり「1」から通じて読んだ方が理解がぐっと深まる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ビジネス
感想投稿日 : 2012年9月23日
読了日 : 2012年9月23日
本棚登録日 : 2012年9月23日

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