プロコフィエフ短編集 (群像社ライブラリー 22)

  • 群像社 (2009年8月1日発売)
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本棚登録 : 75
感想 : 7
5

2年前に注文後長い積読期間を経てようやく読み始めた。
・いまわしい犬〜印象としてはお上品な短編小説。現代社会と違うプロコフィエフが生きていた時代のごく普通の生活感が薫ってくるような。プロコフィエフ的な軽いジョークとも取れる風刺を最後に忘れないところがヤハリと思わせる。
・毒きのこのお話〜アンデルセンなどの童話のような話。
入歯を池に投げ入れる復讐が潔く爽快。
復讐後、自分はベニテングダケ寄りだと言わんばかりに会いに行ったあたり、冒険ゴコロを感じる。

・彷徨える塔〜ここまで来て、三編三様。
精神世界と繋がっているようなミステリーで面白かった。歩くエッフェル塔だなんて夢にでも出てきそうな。
「ヴァイオリンを引っ張り出したケースの様に空っぽ」という比喩が意味を持つのはプロコフィエフならでは。
・紫外線の気まぐれ〜目のやりどころ、発想が面白い。時空のねじれ。シベリア鉄道移動中に書かれたらしい。
・喫煙室にて〜恋バナをする男二人。
・罪深い情熱〜未完なのが残念。どういう結末か知りたかった。誰と付き合ったって良いじゃないかという事か何なのか。
・二人の公爵〜不条理。
・ひきがえる〜エグい。

短編11編の後に、日本滞在中の二ヶ月間に書いた赤裸々日記掲載。
日本の風土の美しさに感動する様子、京都、大阪、奈良、軽井沢、箱根にも足を運び、2ヶ月の滞在にも関わらず日本らしさを相当満喫したと見られる。
日本の聴衆のレベルの低さ、練習して聴かせるに値しない人達のように書かれている。
プロコフィエフの人生の一部が詰まった本だと思うと、一編ずつのメッセージをよく考えたくなった。特に中盤以降。
日本を旅している中で感じた事もリアルにシンクロしている小説に思えたから。ただ書いたのではなく、隠された暗号化されたメッセージか日記のようなものがあると思う。
面白かった。


空想する、イメージすることが表現する上で大事だから、物語を創ることも、同じジャンルなのかなと思わせた。「言葉」を操る点が違うだけ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 音楽
感想投稿日 : 2015年2月10日
読了日 : 2015年2月20日
本棚登録日 : 2015年2月20日

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