「部屋を片付けられない人間には、心に問題がある」
片付け屋 大庭十萬里が、片付かない部屋の原因を探りながら綺麗な部屋に甦らせる物語。
ケース1 精算
主人公 アラサー独身OL
ケース2 木魚堂
主人公 妻に先立たれ男寡になった職人
ケース3 豪商の館
主人公 資産家で一人暮らしの老女
ケース4 きれいすぎる部屋
主人公 一部屋しか片付けられない主婦
どのケースでも、その人の生きてきた証が背景にあるので、とてもリアリティがあった。
十萬里さんは単に部屋を片付けるのではない。
彼女のお仕事は片付けることではなく、
な、なんと片付けの方法を指導することなのだ!
えっ!そうだったの?
片付けてくれないの??
彼女は主人公達が何故その状態になっているのか自ら気付かせ、時には家族を巻き込んで、そこから抜け出せるように導いていく。
この設定が面白く、また依頼者が本人ではないため、毎回主人公たちは面食らうことになる。
また十萬里さんのキャラがなかなか良い。言いたい事は殆ど口にせず、主人公に同調しない。ため息と刺さる一言を必殺技にしているようだ。
「もしも明日が人生最後のゴミの日だとしたら、どうします?」
この言葉には流石にドキッとした。
そして十萬里さんは言う。
「今やゴミ処理場はどこも満杯だから、そういう日が来てもおかしくないと私は思っている」と・・・
なんですと?
これは大変だ!!
呑気に読後レビューしている場合じゃない笑
でも、確かにお家が片付いている度合いと、心の状態って比例していると思う。
豪商の館の老女ほどではないが、私も時々、勿体無い症候群が捨てられない原因になっていることがある。
まずい・・・
何だか家中パトロールして片付けたい心理状態になってきたぞ。でも深夜だから明日にしよう♪
それにしてもすごい影響力だ!
流石は垣谷美雨さん。
巧妙な構成と登場人物のリアルな心理描写で、主人公が時折、自分の合わせ鏡のように感じられた。心の隙間に響く作品で誰しも何処かしら思い当たる節があると思う。読後はじんわり温かく爽快な気持ちになれる作品だった。
- 感想投稿日 : 2024年1月10日
- 読了日 : 2024年1月10日
- 本棚登録日 : 2023年12月21日
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