ゴールデンカムイ 1 (ヤングジャンプコミックス)

著者 :
  • 集英社 (2015年1月19日発売)
4.21
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本棚登録 : 4866
感想 : 244
5

北海道が好きです。
時刻表とガイドブックで彼の地を夢想するしかなかった頃から、小説やドキュメンタリー、「じゃじゃ馬グルーミン☆UP! 」「銀の匙」に「北の国から」「北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ」などで想像の翼を広げ、ようやく現地に旅行し、試される大地に暮らす友人を訪ねることができるようになった後でも、その足跡は広大な大地に刻んだわずかな点にすぎず、憧れは未だ止むことを知りません。

そんな中でこの作品を知り、一も二もなく手に取りました。

「このマンガがすごい!2016オトコ編 2位」「第9回マンガ大賞」などに輝き、アニメも第3期まで放映されて第4期の放映待ちと、自分がこんなところでレビューなんて書かなくてもその魅力はよく知られていると思いますが、自分の覚えのために書いてみます。

一読して圧倒されたのは、何よりもその疾走感です。
コミックス1巻では、埋蔵金の情報をつかんだ後、アシㇼパさんとの出会いと羆との対決、おびき出した脱獄囚の捕獲と尾形百之助との対決、「脱獄王」白石吉竹との闘争と生存のための共闘まで、息つく暇なくストーリーが展開します。
特に場面の転換方法が見事で全く間延びした感じを与えません。埋蔵金を追うきっかけにしても、白石の登場場面にしても、それぞれ「しゃべりすぎた」「2人目」の台詞とともに小銃を構えていたりくくり罠にかかっていたりするおっさんのアップが出て、でも読者はその前後の事情がきちんと想像できるのです。
加えて、闘争と闘争の合間にはアシㇼパさんによる狩りとチタタㇷ゚などの料理という、このシリーズの魅力の根幹がたっぷり詰め込まれていて、読者は本当に気を抜くことができません。

アイヌの様子も、肩ひじを張らず楽しく読むことができます。もともと、北海道では地名の起源にほぼ必ずアイヌの言葉があり、たいていの地名にはその解説がついてくるので、北海道にアイヌという先住民族がいたことには多少の馴染みはありました。札幌を「サッポロペッ(かわいた大きい川)」と解説されるだけで、思いは名前が付けられた当時の石狩平野とそこで暮らしていた人々の様子に向かいます。こと「ゴールデンカムイ」では地名の起源に止まらず、狩りの様子や料理の様子、身に付けているものや風習などを、アシㇼパさんを通じて気軽に見ることができます。
おまけに、チタタㇷ゚、ヒンナ、オソマなど、口に出しやすいアイヌの単語が癖になります。
ちなみに、自分的にはエルルゥ・アルルゥのイメージがちらちらして懐かしいのもプラスです。

そして、おそらく多くの人と共通する思いが料理の描写のすばらしさ。焚火を囲んで食べるリスのチタタㇷ゚の美味そうなことと言ったら。たいていの獲物の脳みそに塩をかけて生で食べる(杉元がw)のもたまりません。

その杉元のアシㇼパさんに対する態度も読みどころです。杉元は彼女を呼ぶときさん付けを欠かしません。狩猟や森林でのサバイバルに長けた先達として、そして金塊を追う共闘相手として一目置いているのに止まらず、彼女を「飼いイヌ」呼ばわりした白石に向けた怒りは、家族から結核患者が出たときに自らが受けた扱いに裏打ちされて、何と言うかとても「フェア」で好もしいものに思えます。

敵なのか味方なのか、何のために争うのか(まあ金(きん)のためなんですが)が判然としないまま事態が進み、ラストにまたやばそうなキャラ(鶴見中尉です)が出てきたところで1巻終了。
つかみは十分です。この勢いのままどんどん読み進めます。

第1話 不死身の杉元
第2話 ウェンカムイ
第3話 罠
第4話 のっぺら坊
第5話 北鎮部隊
第6話 迫害
第7話 脱獄王

立ち塞がる圧倒的な大自然と凶悪な死刑囚。そして、アイヌの少女、エゾ狼との出逢い。『黄金を巡る生存競争』開幕ッ!!!!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ゴールデンカムイ
感想投稿日 : 2021年12月31日
読了日 : 2021年12月31日
本棚登録日 : 2019年5月24日

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