「どくろ杯・ねむれ巴里・西ひがし」
金子光晴は知的障害者かも知れない
彼に引き寄せられて絡み付いて世間をはみ出していく森三千代も
引けをとらない流れ者だったのだろう
それほどに彼の人生は映像化されているように見える
何年もたった過去のディテールを克明に描けるあたりも
前後の不安におびえる前に行動してしまう社会性のなさも
彼の人となりを物語っているようだ
プライドが故に自尊心をかなぐり捨て
自分を保とうとする故に相対する自分を持て余し
永遠に旅から休むことができずに赤裸々に生きる
そこには社会性から抜けられない多くの人間達にとっての
嘘のない無い物ねだりの魅力が詰まっているのだろう
最近のテレビで「世界一のダンディーは誰だ」と言う番組に
どこまでもあか抜けしない金子光晴がノミネートされていた
結局はアカデミックな「サイード」とその裏側にある植木等に
競り負けてしまったけれど
その人間くさい存在は揺るがないようだ
インテリーにとって型破りでありながらホットさせる彼らこそが
気の置けない高嶺の花に違いない
私にとってのドン・キホーテ・デラマンチャと孫悟空と良寛が
生涯のあこがれとなったのと同じようなことなのだろう
それは自分にできない人生を選んでいる者に対するジェラシーですら
あるのかもしれない
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2012年3月8日
- 読了日 : 2008年4月20日
- 本棚登録日 : 2012年3月8日
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