ねむれ巴里 (中公文庫 か 18-9)

著者 :
  • 中央公論新社 (2005年6月25日発売)
3.80
  • (22)
  • (22)
  • (28)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 341
感想 : 26
4

「どくろ杯・ねむれ巴里・西ひがし」
金子光晴は知的障害者かも知れない
彼に引き寄せられて絡み付いて世間をはみ出していく森三千代も
引けをとらない流れ者だったのだろう
それほどに彼の人生は映像化されているように見える
何年もたった過去のディテールを克明に描けるあたりも
前後の不安におびえる前に行動してしまう社会性のなさも
彼の人となりを物語っているようだ

プライドが故に自尊心をかなぐり捨て
自分を保とうとする故に相対する自分を持て余し
永遠に旅から休むことができずに赤裸々に生きる

そこには社会性から抜けられない多くの人間達にとっての
嘘のない無い物ねだりの魅力が詰まっているのだろう
最近のテレビで「世界一のダンディーは誰だ」と言う番組に
どこまでもあか抜けしない金子光晴がノミネートされていた
結局はアカデミックな「サイード」とその裏側にある植木等に
競り負けてしまったけれど
その人間くさい存在は揺るがないようだ

インテリーにとって型破りでありながらホットさせる彼らこそが
気の置けない高嶺の花に違いない

私にとってのドン・キホーテ・デラマンチャと孫悟空と良寛が
生涯のあこがれとなったのと同じようなことなのだろう
それは自分にできない人生を選んでいる者に対するジェラシーですら
あるのかもしれない

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年3月8日
読了日 : 2008年4月20日
本棚登録日 : 2012年3月8日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする