JR崩壊 なぜ連続事故は起こったのか? (角川oneテーマ21)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店 (2013年12月13日発売)
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 2011年から13年にかけて、JR北海道で相次いで起こった脱線事故や車両の不具合の原因を分析し、安全が担保できない程の経営難であることを含め、JR北海道が抱える構造的な問題を指摘した本。事故の解説については技術的なことも含め、鉄道経営の話についてはデータを駆使して、問題点と筆者の提言がなされる。
 『JR崩壊』というのは物騒、というか落ち着かないタイトルだとおれは思ったが「JR北海道をはじめとする鉄道事業者が共通して抱える問題を放置しておくと、いずれ危険な状況に陥るから改めなければならないとの願いを込めたもの」(p.195)らしい。正直鉄道の経営とか、あるいは北海道についても全然馴染みがないので、読むのに苦労するのかと思ったし、実際興味の持てないデータの話も多々あったけど、主張自体は明確で読みやすい。なんといっても国鉄民営化、でJRグループが出来たけど、「経営状況が脆弱」なJR三島会社(JR北海道、四国、九州)&JR貨物と、本州にあるJR東日本、西日本、東海の二分化できる、というのが、印象に残った。ロゴの色が違う、とかそういう話ではない、ということが分かる。
 第3章までは筆者の分析や提言だが、第4章は「識者の意見」として交通評論家、という肩書の人と元JR九州の社長の2人が現在と今後のJRについて語る章になっており、この章は極めて分かりやすく、興味深く読めた。特にJR九州の元社長の話は「常に改革し続けていかなければ改革ではない」(p.168)とか、「消費者が何を基準に選ぶかと言ったら理性的な価値ではなくて、感性的な価値で選ぶ」(p.177)とか、「現場と現物と現実」の「三現主義」(p.183)とか、ビジネス書みたいになっている。「ななつ星」をヒットさせる思想、というのが経営を立て直したハウステンボスやUSJの話みたいで、面白かった。確かにJR北海道だってこの元社長の言うように「開拓使的な原野的なロケーション」(p.190)を活かしたビジネスなんてできそうだけどなあ、と思うけど、同時に経営はそんなに簡単なものじゃない、というのも分かるし、もう1人の識者も言うように「技術屋さんと営業屋さんと労務屋さん」(p.144)のバランスが悪いということで、そういう発想に至らないという、まさに構造的な問題というのもあるらしいので難しい。
 今から7年前、なので、こういう不祥事を受けて今はどういう状況になっているのかよく分からないということと、北海道はよく分からないのでJR東日本の場合はどうなのかということを知りたいと思った。(20/09/18)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新書
感想投稿日 : 2020年9月18日
読了日 : 2020年9月18日
本棚登録日 : 2020年9月18日

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