【263冊目】新型コロナが流行っているこの時期だからこそ手に取った本。きっとこういうことでもないと読まないテーマだと思ったから、逆にこれを未知の世界に出会うチャンスだと思わないと!とはいえ、似たようなテーマの本はこの時期(そしてこの後しばらくは)たくさん出版されると思われるところ、当たり外れあるだろうなと。その点、「新しい地政学」に寄稿していた筆者なら一定程度のクオリティは担保されてるかと思い、購入。あとがきで知ったが、北岡伸一氏の弟子だとのこと。
内容は、①感染症は国際的な保健協力によって対処されてきておりいくつもの成功例があること、そして、②保健協力にはたぶんに政治的な側面があることを示しているもの。
冒頭、チフスやペストといった有名な感染症の歴史の概観がすでに興味深い。特に、これまで公衆衛生分野に興味を持ってこなかった者としては、流行が当時の世相を作ったり、あるいはまさに現代と同じように家にこもって隔離という措置をとっていたことが興味深かった。
また、インフルエンザが第一次世界大戦のフランス陸軍前線兵士の半分を撤退させたなど、感染症が軍事面にも影響を及ぼしてきた事例も、後に描かれるWHO外交とあわせて、感染症が安全保障に影響を及ぼす例として面白い。
さらに、WHOが根絶に成功した天然痘やポリオと、根絶していないマラリアでは、政策面の違いだけでなく、感染経路(ヒトヒト感染か、媒介物があるか)が異なるというのも興味深い。
あと、最後の章を割いて医薬品への「アクセス」を説明しているのも、僕的には◎。厚労省に就職しようとか考えたことすらなかったけど、薬価に対する規制が日本における医薬品へのアクセスを容易にしている面があるとは知らなかった!厚労省(医政局)ってすごいんだなー!
薄くて読みやすいし、感染症が国際政治や安全保障の問題だという筆者の立場を踏まえれば、内閣官房国家安全保障局の職員さんとか読めばいいのに…笑
- 感想投稿日 : 2020年5月10日
- 読了日 : 2020年5月10日
- 本棚登録日 : 2020年5月10日
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