歴史家が見る現代世界 (講談社現代新書)

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  • 講談社 (2014年4月18日発売)
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現代哲学の流れにおいても、人間中心主義や西洋的理性中心主義の反省から、脱中心化的な動きがあった。歴史学のなかでも、国家間の「インターナショナル」の歴史から、国家の枠を超えた「トランスナショナル」、地球規模で環境などにも焦点を当てた「グローバル」な視点からの歴史認識への変遷が最近の動きという。また、軍事・経済面中心のハード・パワーから、文化や技術の影響力といったソフト・パワーに焦点を当てる流れにもなってきているらしい。
そうした中で、「歴史解釈」にはいろいろあれど、歴史自体は不変であり、歴史の事実について国家の枠を超えた人類の「記憶の共同体」の構築が必要である。
これを支えるのは、地球人としての認識であり、国家や民族という意識だけではなく、ジェンダーや障がいの有無などを超えた、人権意識の構築の重要性について語られていた。
近代から現代に至る歴史の流れの中で、情勢は着実に前進しているとの指摘はその通りだと思う。しかし、日本や世界の現状を見るに、そう安堵できるものではなく、これらの課題の解決に向けた言及がないところに物足りなさを感じた。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2015年10月20日
本棚登録日 : 2015年10月20日

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