あなたが世界を変える日―12歳の少女が環境サミットで語った伝説のスピーチ

  • 学陽書房 (2003年7月15日発売)
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ここに一冊の本があります。
「あなたが世界を変える日」(学陽書房)。
よくご存知の方もあると思います。
1992年にブラジルのリオで行われたサミットに,セヴァン・スズキちゃんが飛び入りで参加して演説したスピーチです。
この本は僕がイベントなどの活動を始めた原点の一つです。
洞爺湖サミットの前に改めて読んでみました。

「こんにちは,セヴァン・スズキです。エコを代表してお話しします。」

そう言って,12歳の少女は演説を始めます。

「エコというのは,子供環境運動(エンヴァイロンメンタル・チルドレンズ・オーガニゼーション)の略です。
カナダの12歳から13歳のこどもたちの集まりで,今の世界を変えるためにがんばっています。
あなたたち大人のみなさんにも,ぜひ生き方を変えていただくようお願いするために,自分たちで費用をためて,カナダからブラジルまで1万キロの旅をしてきました。」

12歳の少女のスピーチに世界の首脳が耳を澄まします。

「私がここに立って話をしているのは,未来に生きる子どもたちのためです。
そして,もう行くところもなく,死に絶えようとしている無数の動物たちのためです。」

彼女たちは,自分たちの損得抜きに,このことだけをただ訴えるために,カナダからブラジルまで自費でやってきました。
途中どんな思いだったのでしょう。
何が彼女たちを突き動かしたのでしょう。

「太陽のもとにでるのが,私はこわい。
オゾン層に穴があいたから。
呼吸をすることさえこわい。
空気にどんな毒が入っているかもしれないから。

父とよくバンクーバーで釣りをしたものです。
数年前に,体中ガンでおかされた魚に出会うまで。
そして今,動物や植物たちが毎日のように絶滅していくのを,
私たちは耳にします。

それらは,もう永遠にもどってこないんです。」

彼女のスピーチは今でも僕たちおとなの胸をえぐります。
このような世界にしたのは子供ではなく,あきらかに私たち大人たちだからです。

「こんな大変なことが,ものすごいいきおいで起こっているのに,私たち人間ときたら,まるでまだまだ余裕があるようなのんきな顔をしています。
まだ子どもの私には,この危機を救うのになにをしたらいいのかはっきりわかりません。
でも,あなたたち大人にも知ってほしいんです。
あなたたちもよい解決法なんてもっていないっていうことを。

オゾン層にあいた穴を
どうやってふさぐのか,
あなたは知らないでしょう。

死んだ川に
どうやってサケを呼びもどすのか,
あなたは知らないでしょう。

絶滅した動物を
どうやって生きかえらせるのか,
あなたは知らないでしょう。

そして,
今や砂漠となってしまった場所に
どうやって森をよみがえらせるのか,
あなたは知らないでしょう。

どうやって直すのか
わからないものを,
こわしつづけるのはもうやめてください。」

ここまで読むと,僕はいつも涙がとまらなくなります。

「ここでは,あなたたちは
政府とか企業とか団体とかの代表でしょう。
あるいは,報道関係者か政治家かもしれない。
でもほんとうは,あなたたちもだれかの母親であり,父親であり,
姉妹であり,兄弟であり,おばであり,おじなんです。
そしてあなたたちのだれもが,だれかの子どもなんです。

私はまだ子どもですが,
ここにいる私たちみんなが
同じ大きな家族の一員であることを知っています。
そうです50億以上の人間からなる大家族。
いいえ,じつは
3千万種類の生物からなる大家族です。
国境や各国の政府が
どんなに私たちを分けへだてようとしても,
このことは変えようがありません。

私の国でのむだづかいはたいへんなものです。
買っては捨て,また買っては捨てています。
それでも物を浪費しつづける北の国々は,
南の国々と富をわかちあおうとはしません。
物がありあまっているのに,
私たちは自分の富を,ほんの少しでも
手ばなすのがこわいんです。

カナダの私たちは
十分な食べ物と水と住まいを持つ
めぐまれた生活をしています。
時計,自転車,コンピュータ,テレビ,
私たちの持っているものを数えあげたら
何日もかかるでしょう。」

セヴァン・スズキさん,それは日本でも同じです。
後進国の犠牲の上で先進国が成り立っているんです。

「2日前ここブラジルで
家のないストリートチルドレンと出会い,
私はショックを受けました。
ひとりの子どもが私たちにこう言いました。」

「ぼくが金持ちだったらなぁ。
もしそうなら,家のない子すべてに,
食べものと,着るものと,
薬と,住む場所と,
やさしさと愛情をあげるのに」

「家もなにもないひとりの子どもが,
わかちあうことを考えているというのに,
すべてを持っている私たちが
こんなに欲が深いのは,
いったいどうしてなんでしょう。」

教育ってなんだろう。
なぜ多くの日本人の子供は傷つけ合うようにしかならないんだろう?

「学校で,いや,幼稚園でさえ,
あなたたち大人は私たち子どもに,
世のなかでどうふるまうかを教えてくれます。

たとえば,
争いをしないこと
話しあいで解決すること
他人を尊重すること
ちらかしたら自分でかたづけること
ほかの生き物をみやみに傷つけないこと
わかちあうこと
そして欲張らないこと

ならばなぜ,あなたたちは,
私たちにするなということを
しているんですか。

お聞きしますが,
私たち子どもの未来を
真剣に考えたことがありますか。
父はいつも私に不言実行,つまり,
ないをいうかではなく,ないをするかで
その人の値打ちが決まる,といいます。
しかしあなたたち大人が
やっていることのせいで,
私たちは泣いています。

あなたたちはいつも
私たちを愛しているといいます。
しかし,いわせてください。
もしそのことがほんとうなら,
どうか,ほんとうだということを
行動でしめしてください。

最後まで私の話をきいてくださって
ありがとうございました。」


洞爺湖サミットの前にもう一度彼女の思いを噛み締めたいと思います。
自分に何ができるかを考えてみたいと思います。

僕の子どものために,そして生まれてくる3人目の孫のために。
そして
未来のこどもたちのために。
地球上にこれから生まれてくる子どもたちを悲しませないため
に。



「あなたが世界を変える日」
BCID(ブッククロッシング登録番号)=219−6284259
自分の本を旅立たせるブッククロッシングについては,こちらをご覧下さい。
http://www.bookcrossing.jp

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 環境問題
感想投稿日 : 2008年7月6日
本棚登録日 : 2008年7月6日

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