未完の作品「グッド・バイ」を含めた16つの短編集。
戦時中に太宰が妻子を連れて甲府へ疎開したときの話が「薄明」「たずねびと」。そして、津軽の生家へ再疎開した時に、東京での十五年間を振り返って「十五年間」が書かれた。
過酷すぎる状況だけに、太宰のユーモアも皮肉に感じられるところが多かった。
その後、津軽の生家を引き払い、家族と共に上京した後、昔よく遊びに行ったとこの娘と偶然に再開したときの話が「メリイクリスマス」。真相を知ったときの男(太宰?)の男前な言動にジンときた。
その他「男女同権」「饗応夫人」「眉山」「女類」などの作品では、当時の男尊女卑の風潮を強く感じた。物語としてはおもしろいけど、そこだけ気になってしまった。
やはり一番印象に残ったのは表題作「グッド・バイ」かな。
妻子持ちの男が十人以上の愛人と別れる決心をし、絶世の美人を妻だと言えば愛人たちも諦めるだろうと作戦を立て、キヌ子という女に妻役を頼み込み、愛人たちの元を回っていく。もうコメディだね。
キヌ子は美女だが、大食いで意地汚く声も悪い女だった。とりあえず一人目の愛人は作戦成功。男は愛人の耳元で「グッド・バイ」と囁く。残りの愛人の元へ向かう途中で、未完のまま終わる。
果たして無事にすべての愛人と別れることはできるのか。そんなことをやっていて妻子にバレてしまわないだろうか。
物語を最後まで見届けたかったな。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年9月2日
- 読了日 : 2023年8月27日
- 本棚登録日 : 2023年8月21日
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