「個性」が発見された建安文学の支柱3人の詩文集。三国志の当事者が見て、感じて、考えて、発した言葉からは、その人が確かに生きていたという証と、三国時代の生の景色が直に伝わってくる。曹操・曹植の個人史と上表の文は、事件や天変や疫病など史書との一致が認められ、彼らを追体験するような感覚があったし、曹植が呉蜀との戦争に加わりたいと請う文面に、(孫権は当然として)諸葛亮の名が記されている箇所は、彼が実質上の蜀のトップとして認識されていた事を示す証言。特に曹植の文章からは、彼が詩才に長けつつも、イメージされがちな文弱の徒でなかった姿が垣間見られ、作者の個が発露する"文学"を見出せる。物語ではない、人間の声を聴くことが出来る「三国志」と言える一冊。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
文芸
- 感想投稿日 : 2022年4月5日
- 読了日 : 2022年4月5日
- 本棚登録日 : 2022年4月5日
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