子どもたちに民主主義を教えよう――対立から合意を導く力を育む

  • あさま社 (2022年10月8日発売)
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感想 : 40
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日本の教育の現状と課題を提示した本。

感想

良い本で非常に考えさせれる本。

10年くらい前に出会っていたかったなぁとも思う。

また工藤先生は民間のご経験があるのかと私は勘違いしていた。
どこかでお話を聞いたりご一緒してみたりしたいと思った。



教育界だけでは無いかもしれないが、
特に学校という現場は、
感情論が入りやすいような気がした。

教員の感情、
生徒の思い
卒業生の思いなど。

だから、何が最上位目標なのか?
を忘れがちな気がする。




厳しいことを言えば
この本が良い本と言われているくらいでは、
正直まだまだ日本はレベルが低いと思ってしまった。

ここに書いてることを前提として、ではどうするか?と話を進めていかないといけないと感じた。







序章学校は何のために存在するか

・学校を民主主義の土台とする

・民主主義とは、対話を重ねながら、社会やルールを作っていくことに意義がある。


・日本は民主主義国家だと思われているが、
民主主義を理解しきれていない(お上が絶対と言う意識が長い間あったから)


・教員主導で、民主的な対話の仕方を実践しながら、組織を変えていく


1章民主主義の土台としての学校

・誰1人置き去りにしないためにどうしたら良いか?を共通のゴールにする。(最上位目標とする)
多数決の問題点は、少数派の意見が切り捨てられてしまう

※多数決OKの条件
A案でもB案でも誰の利益を損ねることがないとき


・自由の相互承認(ヘーゲル)
すべての人が対等に自由な存在であることをお互い認め合う。
そのことをルールとした社会


・一般意志(ルソー)
みんなの意思を持ち寄って見出した、みんなの利益になる行為
1部の人の意思や権力で決められた方や権力はダメ



・公教育の役割
すべての人の自由を実現して、そして社会における自由の相互承認をより充実するための制度

ルールは作るものではなく、与えられるものだと誤解している人が多い


・学校は、一人一人の自由と平和な社会のためにある


・ランニング、コンパス2030 は教育界の目指すべき方向性そのもの

教育の最上位目標
個人及び社会の2030年におけるウェルビーイング


最上位目標実現する手段
①責任ある行動をとる力。
②対立やジレンマに対処する力
③新たな価値を創造する力


・当事者意識の低い日本
(特に政治への参加意識が低い)


・だから、教育が必要。
子どもの時から

【社会をみんなで作っていくもの】
【人のせいにしない自分で考え行動しよう。】
【おかしいと思ったらちゃんと声をあげよう。】
【対立は必ず起きるから、それをどう解決するか学ぼう】
ということを教える。


×あなただからできたでしょう。
×社会が悪いから学校が良くない。
×どうして全国に広がらないんですか

→当事者意識がない
 行動を起こそう



2章日本の学校の大問題

・課題①心の教育「思いやり」で対立は解消できない


心の教育はできもしないことをゴール設定にしているから、いろいろな歪みを生む


嫌いな人がいても構わない
対話を通した合意形成の経験を積むことが重要

道徳は、国や時代、宗教によって大きく変わるもの。それよりも
市民教育を



・課題②いじめ、撲滅の発想がいじめを増やす。

子どとのトラブルに大人がいつまでも介入していると、子どとたちは自分の問題を自分で解決すると言う当事者意識を失ってしまう。 


いじめの定義を広げすぎたがために、本当に助けが必要な事案が埋もれてしまった

いじめの発生件数を減らす事が、目的化すると、大人による過度の介入か隠蔽が起こる  


子どもの自己解決能力を伸ばすことに力を注ぎたい

いじめを減らすための設計の2つの提言

①学校空間で子どもたちが受けるストレスをできるだけ減らす。
自己肯定感を高めるなど

②学校設計を流動的にする
固定担任生を止めるのも、1つの手


・課題③教員養成同質性と従順さの要求

教員養成の段階で、同質性と従順さを求めてしまっている。
教師は自由の相互承認こそ教えるべき存在だが、教員養成の段階から逸脱していると、厳しい指導が入ることも


日本人の従属性は、家族システムから切っている(お父さんが偉くて兄弟姉妹が不平等)


・課題④理不尽な校則「ルールは守るもの」とだけ教える学校教育

ルールだから仕方ないと思うのではなく、
ほんとにこのルールでいいのかと言うクリティカルシンキングを


・課題⑤学級運営、学級王国の問題


日本は、学級王国を築きたがる教員が多い。

学級を家族のような集団であるべきと考えると
真面目な先生ほど苦しむ。
(愛せない子がいる、一致団結できないなど)


教師の仮面を脱ぐことの大切さ

3つの問いかけが有効

「どうしたの?」
(子供の置かれている状態を言語化してもらう。
メタ認知の1歩。頭ごなしに叱らない。)

「どうしたいの?」
意思を確認。
置かれた状態を解決するための方法を頭の中で考えるきっかけ作り


「何か手伝える事はある?」
問題解決の手助け。
どんな支援を受けるのか、手助けを受けないのかを判断するの子ども自身。
大人がサポートの意志表示することで味方であると認識してもらい、心理的安全性に寄与する。



課題⑥教師の力先生の技量を上げれば、問題を解決すると言う幻想


教える技術の向上にこだわると、子どもたちは、受け身になり、主体的に学ぶ体験ができなくなり、当事者意識も奪いかねない。
それより自立を支援する技術の方が必要。


どんな教育なら良いのか、最上位目標、本質論が欠けている

3章学校は「対話」で変わる


・自分たちの学校を自分たちで作ると言う意識を

・合意を目指すアプローチ(超ディベート)を

・スピーチ指導を徹底する理由
 みんなを当事者意識に変えていくから


プレゼンテーション3つのチェックポイント。
①僕は何のためにプレゼンしてるのか?
②誰に対してプレゼンしているのか
③話した言葉が、相手にはどう伝わっているのか


・理想とのギャップに苦しむ教員へアドバイス

①できるだけ対立構造を作らない。
戦わなくてよさそうなところから学校変えていく(例えば年1回の学校行事など)

②子どもたちに任せつつも、戦略はしっかりアドバイスをする。
やる以上成果につなげていく。


・スピーチ指導を徹底する。
常に次の3つを自分に問う
①何のためにプレゼンしてるのか
②誰に対してプレゼンしているのか
③話した言葉が、相手にはどう伝わっているのか


・理想とのギャップに悩む教員へ


できるだけ対立構造を作らない


・意識改革は、3つのステップで進む。
1自己矛盾が起きるフェーズ

2優先すべきものを自問自答するフェーズ


3 矛盾しない自分に変わっていくプロセスを考えるフェーズ

・こだわりを捨てる

終章教育を哲学することの意味

・この本を使って対話会を開いて欲しい




読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年5月17日
読了日 : 2023年5月23日
本棚登録日 : 2023年2月26日

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