『西海原子力発電所』執筆中にチェルノブイリ原発事故が起こり当初の構想を変えたという。現実の惨状を前に変えざるをえなかったのであろう。原発の破壊力のイメージはイメージを超えて眼前したのだから。原発殺人事件とも題されそうなミステリー調の作品となっている。ここで表出しきれなかった悔いが『輸送』を書かせる。事後の様子が大半を占めるこの作品は、被爆者の肉体と精神の破壊をあらゆる角度から切り出す。それぞれのエピソードに決着はない。ただ緩やかな崩壊が景色の中を漂う。そして現在も。この恐怖に抗わねばならぬことを自覚せよ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2014年4月2日
- 読了日 : 2014年4月2日
- 本棚登録日 : 2014年4月2日
みんなの感想をみる