再読。《死の概念》と《愛の三角関係》とやらが主題となると得てして陳腐な物語に陥りがちであるが、福永武彦のデッサン力にかかれば無垢な魂が靄のように覆い尽くし絶品なタブローとして表出される。特に「廃市」は白眉、死につつ街のぞっとするほど冷ややかな光景に恍惚となる。シュールな前衛的作品も同様。「影の部分」では主体と客体、ポジとネガが幾度も入れ替わり混沌としながら徐々にアウトラインが浮かび出る。そして眩いばかりノスタルジー溢れるラストシーンの美しさにただ打ち拉がれる。収録作いずれも無垢な心の闇をえぐり出した逸品。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2014年1月11日
- 読了日 : 2012年1月5日
- 本棚登録日 : 2014年1月11日
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