噂にたがわず「橋上の人」が凄まじかった。戦争で死んだ者の遺言執行人として、死にそこなった者が残りの生を全うしようとする覚悟。戦後の荒地から新たに芽吹く生命の息吹に希望を託すも、張りぼての似非復興社会に柔軟に迎合する共同体への不信は積もり積もり、だから猶更死者との対話を請け負うことが詩人の使命となる。ここではないどこかへの船出は叶わず、言葉を武器に破壊の街に踏み止まる。現実のありのままの風景と対峙し、言葉で切り裂くことで詩は詩となる。この破壊力を活かす土壌のないこの国の有り様を、嘆かわしく思う。
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カテゴリ:
詩歌
- 感想投稿日 : 2016年3月17日
- 読了日 : 2016年3月17日
- 本棚登録日 : 2016年3月17日
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