おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ

著者 :
制作 : 日経レストラン 
  • 日経BP (2011年7月25日発売)
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「なんて不遜なタイトルなんだ」というのが正直なところの最初の印象。しかし、この本を読み進めるうちに、このタイトルに込められた意味が徐々に明らかになる。
そこには、著者の「経営哲学」「事業に対する想い」「ノウハウ」の全てが詰まっている。

著者は、かの有名なファミレス、サイゼリアの会長正垣泰彦氏。この本を読んで初めて知ったが、1967年、東京理科大学在学中にレストラン「サイゼリヤ」開業。しかし、客同士のトラブルにより、店舗が全焼してしまう。68年の大学卒業後、イタリア料理店として再オープン。その後、低価格メニュー提供で飛躍的に店舗数を拡大している。(2018年現在:1,469店舗(国内1,085店 海外384店))

「ミラノ風ドリア」といえば、誰もが知る、と言っていいくらいの有名商品だろう。
あの価格で、あのおいしさ。。。それも、1000回以上の改良があってこそのもの。
そして、リーズナブルな料理を提供するために、オーストラリアに自社工場を持ったり、【計画生産】を徹底したり、とおいしさに磨きをかける努力をし続けている。

単に安いから売れているのではなく、そこ背景には、確かな根拠がある。
だからこそ、本書タイトルのように「おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ」と確信している。

そんな正垣氏の持つ経営哲学の背景には、母から学んだ「失敗は成功のチャンス」という考え方と、「お客さんがまた来てくれる喜び」という2点に集約されるように感じる。

本書でも以下のように述べている。
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成功体験から学ぶことは難しい

失敗を繰り返しその経験から学んでこそ成功に近づける。失敗は自己成長する最大のチャンス
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だからこそ、想いを現実にするために、徹底的に仮説検証を現場で繰り替えすことが重要であり、その過程で得られる失敗をかけがえのないものと捉えている。

そして、会社として利益を出すことも重要だが、利益よりもお客さんの数が毎年増えることが重要、という経営哲学だからこそ、「利益が出ないというのは、社会への貢献が不十分な状態」と言い切れるのであろう。
そして、利益を出すためにも、経営者の仕事とは考えることであり、その考えを仮説として、現場で検証していくことを非常に重要視している。

この本には、このような、氏の「売れる店を創るため」の経営哲学や仕事に対する想い、実際にやってきたノウハウが大いに詰め込まれている。経営者だけでなく、マーケティングや財務の方にもぜひ読んで欲しい1冊である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 経営学
感想投稿日 : 2018年12月30日
読了日 : -
本棚登録日 : 2018年12月30日

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