書楼弔堂 待宵

著者 :
  • 集英社 (2023年1月6日発売)
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本棚登録 : 640
感想 : 69
5

やはり面白い。なんといっても京極夏彦。
6年間待っていたことになるのだな、待つことすら忘れるほどの長さだったようにも思う。しかし、読めばわかる。この質感、緻密な展開、この本を6年間で提供してくれたことに畏怖を覚える。ありがたいことだ。
読み終えて、さらに次を読みたくなる。それは仕方のないことだ。この物語が次々とつながって、本の最後のページが来なければよいと思う。実に面白い。
今回は弔堂店主の語りもよいが、それ以上に弔堂に至るまでの甘酒屋と客の会話にわくわくし、ぞくぞくした。
意外な展開とやはりそうなるかという安心感とが均衡のとれた状態で語りが進んでいく。
ところどころにちりばめられた甘酒屋の生涯に関する伏線、そう来るか、と思いながら、やはりそう来たか、と思わせる甘酒屋。
甘酒屋と若者の関係にあらぬ期待もしたが、会津と東京では偶然が勝ちすぎる。
このシリーズの楽しみの中にあの人やこの人が登場することがある。歴史上のあの人この人、作者の手の中で不思議な人生を繰り広げ、店主の語りで救われていく。
6年後には明治末の世相を味わえるのだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2023年3月7日
読了日 : 2023年3月4日
本棚登録日 : 2023年3月6日

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