ある治療や医薬品などの効果を立証するには、最終的にはいわゆる臨床試験をするしかないわけであるが、この臨床試験とは別の言い方をすれば人体実験である、と言い換えることができる。
もちろん、現在の臨床試験については厳密なプロトコルが定められ、安全性への最大限の配慮がなされているため、人体実験という言葉からイメージするような危険性は排除されているわけであるが、ともあれ、医学の発展というのが人体実験と共にあった、というのは一つの医学史の事実である。
さて、本書は医学の発展のためにそんな人体実験を、主に自らの身体を差し出して実施した医学者たちの姿を描くノンフィクションである。こう書くとかなり硬い本のように見えるが、どちらかというと、自らの仮説を検証するために危険な人体実験を自らの身体で行う彼らの姿は、ある種のマッド・サイエンティストとも呼べるユニークさがあって大変面白い。
扱われるテーマも、薬、麻酔、寄生虫、病原菌、電磁波とX線、血液、心臓(自身の心臓にカテーテルを刺す自己実験にはドキリとさせられる)など、多様。
医学の歴史を面白く知りたい方におすすめ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
歴史
- 感想投稿日 : 2022年3月27日
- 読了日 : 2022年3月27日
- 本棚登録日 : 2022年2月12日
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