天翔ける (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2021年2月25日発売)
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本棚登録 : 151
感想 : 9
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「四賢候」の一人として、幕末小説などにたびたび登場するが、主役としては取り上げられてはいない松平春嶽が主人公。
幕末にあって、最も偏りのない人物として評価する著者が、彼を中心に動乱の時代を描いた歴史長編。
『大獄 西郷青嵐賦』が、倒幕側から書かれたのに対し、本作は幕府側から描いた幕末史といえよう。
攘夷鎖国で揺れる時代。橋本佐内と横井小楠を重用し、「大政奉還」を持論に、日本の国の行く末の舵取りを図ろうと懸命に模索する春嶽。
大老に推されながらも固辞する彼を、側近は、人物識見とも大老にふさわしいが、野心と我執が足りないと。
春嶽は、将軍継嗣問題で慶喜を推したが、彼に「小才子」の資質を見抜いており、その変質漢振りに翻弄される。
春嶽と慶喜との違いを、坂本龍馬は論断する。
「春嶽候は雄藩連合での<公>の政事をめざしちょる」に、「一橋候が行おうとしちょるのは、徳川家のためだけの<私>の政事だ」と。
この慶喜が、龍馬暗殺の黒幕!?
春嶽と龍馬により大政奉還を余儀なくされたと思い込む慶喜が、若年寄の永井玄蕃頭に「坂本なる浪人は邪魔だな」と、つぶやく場面がある。
その意を忖度して龍馬を殺せ、とほのめかしているとの著述。
龍馬暗殺の黒幕を巡っては、その直後から様々な説が入り乱れているが、著者が示唆するこの解釈は如何。
維新後、役職を退いた春嶽と妻の勇姫が、「西南の役」を起こした西郷について交わす場面がある。春嶽を通じて著者の思いを語って印象深い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史小説
感想投稿日 : 2021年6月20日
読了日 : 2021年6月19日
本棚登録日 : 2021年6月19日

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