日本人はなぜ存在するか

著者 :
  • 集英社インターナショナル (2013年10月25日発売)
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本棚登録 : 352
感想 : 33
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本書は、著者が愛知県立大学で教養科目として担当している(た)「日本の歴史・文化」という授業の講義録である。日本の歴史・文化の単なる概説ではなく、哲学、心理学、社会学、民俗学、文化人類学、比較文学など人文系の様々な学問や方法論について、その特徴や切り口を紹介しながら、「日本人はなぜ存在するか」というテーマについて考えるというものであり、「文系学問」オードブルのような内容になっている。
本書を通底するキーワードは、認識と現実のあいだでループ現象が生じることを指す「再帰性」である。「日本人」や「日本文化」などの当たり前のような概念が、実体があやふやな再帰的なものであることを明らかにしている。
「教養」の大きな要素は、常識のようなことを絶対視せず、物事を相対的に考えるできるようになることだと考えるので、本書はまさに「教養」を養うための内容になっていると感じた。
また、本書で紹介されているエピソードには、戦前に内地在住の朝鮮・台湾人に参政権があったこと、ウルトラマンの社会的背景、「故郷」や「春の海」が純日本音楽でなかったこと、アジアで最初の長編アニメは中国で作られたことなど、知的刺激を受けるものが多かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2019年6月24日
読了日 : 2019年6月20日
本棚登録日 : 2017年12月27日

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