本書は、英国のイザベラバード女史が李朝末期の1890年代に数回に渡って朝鮮半島全域及び近隣地域(満州、沿海州ウラジオストク、長崎、等)を旅(半ば冒険)し、また朝鮮国王をはじめ多くの高位の方々との交流で、見聞き体験したあらゆる事実をその鋭い観察眼と筆致で記録したものです。
英国人全般がそうなのか、バード女史個人の個性なのかわかりませんが、時折皮肉の混じった表現があることが朝鮮紀行全般に渡って文章に妙味を加えています。
この朝鮮紀行が何よりも特筆に価する点としては以下の点が挙げられます。
① 1890年代当時の実体験を極端な脚色もなく即物的に描写していると感じる点(皮肉は面白いw)。
② 旅先における各地の庶民との交流が手に取るように描写されている点(その当時の各地域の常識が垣間見えるようです)。
③ 社会政治経済あらゆる必要な事項を適宜適切に解説を加えてあると感じられる点(この点に関しては100%正しい解説かどうかは素人としては判別困難ですが)
④ 挿絵が多い(しかも上手い)のもさることながら、当時の写真が少なからず掲載されている!
これらの点から、基本的に嘘が無い(女史が常に事実をありのまま記録しようと努めたという前提)と考えるならば(そう考えるのが順当と思います)、相当に史料的価値が高いと言えるでしょう。
当時の様々な歴史事実に対する生き証人の記録という側面も多分にある為、対立意見の存在する歴史事項で女史の旅した時代・地域の出来事に対しては、女史の旅行記と比較して検討するのも面白いと思います。
最後に、一部飛ばしたりしながら拾い読み(といっても100~200P分くらいの分量は見たけど)した結果の書評(感想)であることを告白しておきます(本書全体としては500ページ超の大著)。
(参考1)
日韓併合前後頃の様々な写真が
日韓併合前後 朝鮮半島写真館 (→検索してみてください)
に収められています。
再点検はしていませんが、この中に 朝鮮紀行に掲載されていたのと同じ写真がいくらか混じっていたように思います。
- 感想投稿日 : 2012年1月28日
- 本棚登録日 : 2012年1月28日
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