GHQ焚書図書開封 (2)

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  • 徳間書店 (2008年12月31日発売)
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本書は「GHQ焚書図書開封1」の第二巻である。前巻に引き続き基本的には同様の筆致(焚書された図書数点の原文を一部引用しつつ、著者が解説・解釈・意見等を開陳する構成)である。
本書の目次を以下に列記する

第一章 従軍作家が見たフィリピン戦場最前線
第二章 「バターン死の行進」直前の状況証言
第三章 オランダのインドネシア侵略史①
第四章 オランダのインドネシア侵略史②
第五章 日本軍仏印進駐の実際の情景
第六章 日本軍仏印進駐下の狡猾惰弱なフランス人
第七章 人権国家フランス人の無慈悲なる人権侵害
第八章 アジア侵略の一全体像①
第九章 アジア侵略の一全体像② 
第十章 『太平洋侵略史』という六冊本シリーズ
第十一章 大川周明『米英東亞侵略史』を読む
第十二章 『米本土空襲』という本

蛇足ですが、第十二章『米本土空襲』(昭和18年9月刊 秀文閣書房)の著者、野依秀市氏は、帝都日々新聞の社主であり、帝都日々新聞は野依氏の死後、「やまと新聞」に名前を変えて現在に至っているそうです。意外なところで「やまと新聞」の歴史に接することになりました。

また、第十一章の『米英東亞侵略史』に関しては、佐藤優氏の著作で『米英東亞侵略史』を全文引用、紹介した書籍(2006年発行)があり誰でも容易に入手して読むことが出来ます。第十一章の『太平洋侵略史』の6冊も昨年復刻したようですが、こちらは一冊につき5000円とやや高価。図書館にリクエストして読むのが一般人としてはベターな選択かと思います。またこちらの本は6冊完結ではなく、原著はもっと壮大な冊数で構成される予定で続々刊行中に戦争の為中断。戦後は焚書という憂き目にあい日の目を見なくなった歴史シリーズ。既刊書籍の中の一部がその6冊であるという位置づけの為、壮大な物語の一部分を読む感じになるようです。

本書を読むとつくづく実感することであるが、あまり見たことのない視点・論点・思想・気概、等々が引用されている図書からは垣間見えます。もちろん、引用されている図書が客観的、公平、中立とは思いません。まず第一に引用した図書や引用箇所はすべて著者の主観によります。また、著作自体も当時の人間の主観によるからです。しかし、それを割り引いてもひょっとすると、現代の視点からの史観や現代人による戦前のイメージ風景自体がさらにもっと主観的でかつ偏向しているのではないかと謙虚に感じさせるにはあまりある内容であると思います。

著者が本書p233で以下の通り指摘していることであるが、本書シリーズの目標・目的はこの一文に要約されると言っても過言ではないでしょう。

 『  本が抹殺されるというのはどういうことか、歴史が歪められることはのちのちどういう悪影響を与えるか、という問題提起をしている次第です。いいかえれば本書『焚書図書開封』の狙いは「奪われた歴史」あるいは「空白にされた歴史」の回復にあります。」  』

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2011年11月3日
読了日 : 2011年11月3日
本棚登録日 : 2011年11月3日

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