数学を知らずに経済を語るな!

著者 :
  • PHP研究所 (2011年12月23日発売)
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感想 : 33
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 「数学を知らずに経済を語るな!」この主題から連想してその主旨を堅く論述してあるのかと予想したのですが、蓋を開けてみると数学に詳しくない読者に対して数学的(関係式を読む、グラフを読む、要因毎に分類解析する、論理的思考をする、等)に捉えて理解する重要性を、特に数学知識がない一般向けに照準を合わせて詳細に語って聞かせるような切り口でした。

 話の題材として、消費増税・東電・震災復興・金融政策等、具体的に現在の政治経済ネタを使用しています。様々な記事や書籍から著者の主張をご存じの方ならば、その主張の論拠を述べている過程にもなっていることに気づかれると思います。

 さて、中身の問題ですが本書に記述されている内容について読者が十分にその正しさを検証するためには、経済的素養と数学的素養の両方が必要です。語り口が簡易なので、一見わかりやすく正しい主張のように見えますが、その記述の当否を判断するためには経済用語の意味するところが、逐一定義に従って適切に想起される必要があること、また数学的記述に対しては合理的だと腑に落ちる必要があるからです。まあ、これらの条件を差し引いて、特にいかなる専門知識を有していない場合でも、並みの読解力を前提とした読者全体に共通して得られる知見としては、数学的思考の必要性や言葉を定義しないで論議することの不毛さ、等に関して認識を新たにすることは間違いないでしょう。

 また、インターネットを駆使して経済用語・概念の定義等を確認する手間や、様々な実在する経済データや記事を調査する手間を厭わず、高校数学レベルの数学的ものの見方(具体的な知識ではない、微分積分の基本定義の理解、数式を計算式と見なさず、データの相関を簡明に表現する手段としての言葉、等々、数学的記述のそれが意味するところを想像する力が重要)が可能な方ならば、経済的素養・数学的素養の壁を突破して十分に本書を堪能できると思います。しかし、本書はそこまでの内容なので、ある程度以上の知見を備えた方が本書を読むと内容が薄くて冗長に感じる可能性もあります。

 本書に関して個人的な注文を付けくわえるなら、文章を縦書きの文学的なものにせず、横書きにし、もう少し数式や図表を徹底的に引用しつつ(そこだけを並べて読めば、文章を読まなくても著者の主張が解読できるくらいに!)、別途本書のような記述も併存させれば、数学を熱心に読む読者にとっては満足度が倍加(失礼ながら、「それとともに数学を知らずに経済を語るな!」のタイトルが見せ掛け倒しか、本当に著者にその力量があって主張しているのかの見極めにもなります。また、主張の妥当性の信頼性を高める効果もあります。)したと思います。

 兎も角、現在進行形の政治経済の話が満載なので、著者の主張に対する賛否とわず手に取ってみてはいかがでしょうか?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 経済
感想投稿日 : 2012年6月25日
読了日 : 2012年6月25日
本棚登録日 : 2012年6月25日

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