家事労働ハラスメント――生きづらさの根にあるもの (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店 (2013年10月19日発売)
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感想 : 46
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タイトルから、女性至上主義な内容に偏ってはほしくないと思いながら読み始めましたが杞憂でした。男女間の労働に対する平等性を提言されてから一定の年月は経ちましたが、まだまだ「平等」とは程遠い実態が記されています。

本来家事というものは「癒しの営み」であると著者は説きます。
その中には夫婦のコミュニケーションや、子育てを共有する楽しさや、個人のプライベート時間も含みます。男女ともに平等であるべき「家事」の時間が、「労働」によって浸食されているのが今の実態であり、それを蔓延させているのが「企業・政府」であると指摘します。
「家事は妻が担うもの」が前提とされ、夫は長時間労働というかたちで会社に拘束され、家庭で過ごす時間が激減している現状。夫は一日の大半を仕事で拘束され、妻は「夫の稼ぎがあるから生活できる」という名目で家事を一手に担うことになります。「お金を稼げたはずの時間」が「家事に割く時間」に転化することで妻にかかる家事の比重が上がり、“過度の負担”となり苦しむことになります。そこには夫婦のコミュニケーションも子育てを共有する楽しさも、個人のプライベート時間もありません。
慢性化されてきた体制・考え方は個々の私生活を無視し、“自分らしい生き方”を許容させない大きな壁となって立ちはだかります。

女性の社会進出を足踏みさせる背景にはこうした問題が山積みされていること。ただ漠然と「家事の負担」に四苦八苦している人にとっては目から鱗な事実です。
個人で変えられる規模の話ではないのでまず一人でも多くに、特に立場のある人に読んでほしい一冊。興味深い内容でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新書
感想投稿日 : 2016年2月16日
読了日 : 2016年2月16日
本棚登録日 : 2016年2月16日

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