どうしても嫌いな人: す-ちゃんの決心

著者 :
  • 幻冬舎 (2010年8月1日発売)
3.88
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本棚登録 : 1747
感想 : 267

初めてのすーちゃんシリーズでした。コミックです。

タイトルからもわかるように、すーちゃんには「どうしても嫌いな人」がいて、だから痛いといえば痛い話なのだけど、なんか、気持ちが落ち着く内容になっているのが不思議です。


すーちゃんは、九州から出て来て1人暮らしをしながら働いている36歳の女の子。独身、彼氏なし、でもそこは寂しくはない。

仕事はカフェの雇われ店長さんで、彼女の仕事ぶりを見ると、職場というものの全体の把握ができている、うん、かなり優秀な人のようなんだけど・・・。
そうなんだよね、どこにでもチリっといやな思いをさせる人っているわけで、彼女の場合、それはカフェチェーンの社長さんの姪であり、今はすーちゃんの部下として働いている人。

確信犯なのか、悪気なくなのか、(どっちでも同じくらいイヤだけど)確かにこの人とは一緒に働きたくないなぁ、と思ってしまう。
そして、すーちゃんは、

その人のことを思い出すだけで心の中がざわざわしてくる。
ざわざわしてキリキリする。
嫌いだったら思い出さなきゃいいんだけど なぜか、好きな人より嫌いな人のことを思い出してしまう。
・・・なんでだ? 

と自問自答してしまう。

また、

(ちょっとしたことで楽しくなっていても)
あれ?私、なんか忘れてる って心の中が なにか を探し始め
そうだった、私、今、嫌いな人がいるんだった、と苦しくなる

なんて、あぁ、わかるよぉ~~~~!と。

そして、すーちゃんはどうするか。
うん、それが一番よかったんじゃないの?という解決方法で活路を見出し、
そんな折に田舎から出てきたお母さんとおしゃべりするページには、
しんみりと温かい気持ちになれました。

従姉妹のあかねちゃん(30歳)の結婚話にも、あれこれ思うことが多かったし、
あかねちゃんの気持ちがよくわかるし。

表紙の、箱に入った一個だけのケーキもいいなぁ。

このシリーズ、遡って最初から読んでみたいと思います。(*^_^*)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年9月26日
読了日 : 2012年9月26日
本棚登録日 : 2012年9月26日

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コメント 2件

シンさんのコメント
2013/12/23

じゅんさん、御無沙汰しています。
この書評にひかれ、読んでみました。
ああ、そうだよなあ、と共感しっぱなし。
ささいなことなんですよね。 ほんとささいなこと。
「そこまで気にすることでもないし 」
「もっと大変な人だっているんだから」
と言い聞かせてみるけれど、
今、ここにある嫌な気持ちは動かしようがない。
画風だけ見るとあまりそんな気がしないけど、
実際はたいへん理性的な漫画ですよね。

巧いなあ、と思ったのは、最初、嫌いな人がいる、とだけすーちゃんに言わせて、仕事風景を少し描いてから「それはこいつだ!」と特定するところ。
この間があるから読者はすーちゃんの「嫌い」という感情に肩入れすることができる。

自己分析が鋭いですよね。
負の感情が積み重なって「嫌いな人を慕っている人も嫌い」になる、
それは自分が認められていないような気がするからだ、
という指摘には思わずドキッとしてしまいました。
ああ、こういうところから派閥って生まれるんだろうなあ……。
あかねちゃんの「ちょっとみず6文字みずください6文字」なんかも藝が細かいですよね。

最終的にすーちゃんは仕事を辞め、あかねちゃんは恋人に意見を通す。
このささやかなハッピーエンドにすかっとしました。
このくらいの決断ですらできないことも現実には多々あるし、
いつのまにか自分の方が誰かにとっての「どうしても嫌いな人」になっているかもしれない。

自らを省みる、まさに「自省」という言葉がふさわしい本でした。
益田ミリさん、長くつきあえる作家になりそうです。
すてきな本の御紹介、ありがとうございました。

ところで、先日吉田伸子さんのツイッター(Y田N子名義)を見ていたら
「水無月ちゃん」という呼びかけに目がとまりました。
えっ、水無月さんって昔ノンフィクション談話室で『イギリス人はおかしい』の書評を書いていたあの水無月さん?と思って探ってみたら、やっぱりそうでした。
いまは東京で医師になるための勉強をしているんですね。すごいなあ。
新潟のお母様のことも時々書いてらっしゃいますが、なかなかユニークな方のようですね。
どんな方なのでしょう。一度お会いしてみたいな……

などとしらじらしいことはさておいて
(でも本当にびっくりしました)
このように不定期ではありますが、これからもよろしくお願いします。

じゅんさんのコメント
2013/12/24

シンさん
嬉しいコメント、どうもありがとうございます!

すーちゃん、読んでくださってありがとうございます。
私にとっても初めてのミリさんだったので、
とても印象深い作品です。
そっか、去年の秋だったんですね。
あれから随分ミリさんを追っかけて読みました。
時に“めんどくさい女の子”だったりもするミリさんですが、
それだけに、うんうん、わかる!と
頷けるところがいっぱい。

シンさんのコメントにも、そうそう、そうなのよ!!
と同意しまくりでした。(#^.^#)

で、水無月も見つけてくださってありがとうございます。
談話室以来、たくさんの皆様から可愛がっていただいて
ツイッターでやり取りさせてもらっていたり、
本屋大賞の授賞式の時には室長様がたにお会いしたり、
またその二次会では長老みさわさんやマー坊さんと毎年、わいわいおしゃべりするのが
私も水無月もホントに楽しみなんですよ。

水無月のツイッターは私へのメール替わりに見にきていいよ、と言われているので
しょっちゅう覗きに行ってます。
東京で何をしているのかよくわかり、
とても面白いです。

そうそう、今年の夏に帰省した際、
私の誕生日にとミニブーケをくれたのですが、
その時に撮った私のすっぴん写真がアップされてます。
非常にお恥ずかしいものですけど、シンさんには見てもらいたい気もしますのでよかったら探してやってください。

今、ちょっと気持ちが感想文の方向に行かない時期のようでこちらはご無沙汰しておりました。

シンさんのレビューも読ませていただきましたが、
コメントなしでゴメンなさい。

少し早いですが、どうぞよいお年を!(#^.^#)
またよろしくお願いします。

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