にがくてあまい 12 (マッグガーデンコミック EDENシリーズ)

著者 :
  • マッグガーデン (2016年5月14日発売)
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感想 : 14
5

ミナミがライブイベントのバックヤードで、楽しいとマキに抱きついて
「どうしよう!! あたしマキさんと仕事できてサイッコーに幸せ!!」
と言ってくれるの、プロデューサー冥利に尽きる。
ギルバートの言う通り、2人の信頼関係があったからこその成功だ。

会合に出ていたお父さんが偶然仕事をしているマキを見かけて
それは本当に誇らしいけれど、寂しい気持ちにもなるのだろうなと思う。
忙しくて連絡を怠っていたマキを必死でフォローしてくれる渚、マキの為というよりお父さんの為なのだろうけれど、優しい。笑
お父さんが渚にかけたつもりで酔っ払って間違い電話をマキにして、
「マキにはハルバルを継いでほしい」と言うのは
お父さんの気持ちはよく分かる反面マキにしたらとてもしんどい。
お父さんも自分で、仕事をしているマキを「大声で自慢したくなるほど格好良かった」と言っているわけで。

ばばっちがずっと、渚とマキがお似合いだと思っていて
「俺にとって奇跡だから」と言うのも
気持ちがわかるし、うまくいかない現実が哀しくもなる。

お父さんが倒れてしまった時、泣き叫ぶマキを抱きしめて
「おまえの所為なんかじゃない」と言ってくれる渚。
過去に自分がしてもらいたかったことでもあるのだろう。
一緒に眠ってくれて、頭をぎゅっとしてくれるところに愛を感じる。
その布団の跡を見て、ニヤリとするお母さんには笑ってしまった。

そのつもりはなかったのにお母さんの元に足が向いてしまい
お母さんがすぐに悩み事があると気がついてくれるのも
本来はお母さんはこうして渚に接したかったのだろうなと思う。
「あなたはあなたの人生思うように生きなさい」
と言ってくれて嬉しい。

お父さんが無事退院してお祝いをした時
渚が「僕をここで働かせてください」と言ったのには
泣いてしまった。
ずっとこの事を考えていた渚。
確かに彼が言うとおり、お父さんの本当の本心は、
マキに継いで欲しいではなくて
渚と結婚してここを継いで欲しい、だろう。
前に感じた、翼が家を継ぐことを決意した時に
抱いたであろう気持ち。
それと同じような気持ちを渚も抱いたときから、ずっと悩んできた。

オレじゃ不満なのかよ、と言われてそんなことあるもんかい、と胸ぐらを掴むところがマキらしい。
渚の事が好きなマキの気持ちも、マキが仕事を捨てて返ってこられないこともわかっていての渚の選択。
「どこにも答えは見つからなかった。
でもここを守りたいのは本心。
オレは仕事を頑張るおまえが好きだ。
そんなおまえにオレはどんだけ救われてきたか」
こんな言葉を言われて、「最後まで身勝手でごめんな」
とまで言われたら、マキも決意せざるを得ない。

渚が仕事を捨てられないあたしを守ってくれた、
どこにも答えがない中にあったたったひとつの渚の願い
それを理解しているマキは、やっぱり渚と深い絆で結ばれていると思う。
「だから見ててね。ここからあたしの足許照らしていてね」
の見開きは涙なしに見られなかった。

ならあたしも仕事辞める、と言えないマキ。
クラリスの声で言ってやればよかった、には笑ったが
そういうマキなら、多分渚とこういう信頼関係にはなっていないのだろう。

ばばっちが渚が出ていったのが自分のせいだと思い悩んでいてマキに謝罪したのも泣けてしまった。
良かれと思って言ったことが渚を追い詰めた結果だと考えていたとは。
カミングアウトは残念ながら失敗していたが。苦笑
「江田はオレにとって奇跡なんだ」
「一緒にいたいけど」
という言葉が聞けるのは、マキにとって嬉しいことだったのではないかと思う。
ばばっちの言う通り、渚とマキは惹かれ合って認め合っている素敵な関係だ。
渚がマキを受け入れない姿を、自分が傷つきたくなくて純を遠ざけていた時い重ねていたとは。
それは確かに、もどかしくもなるだろう。

渚にずっと好きでいて欲しいから、仕事を選ぶ。
マキらしい選択だ。
しー君の会社に誘われていると聞いて
「しっかりしなよ、これでもう振り返らなくていいんだよ」
という励まし方をするところも彼女らしい。
「渚が一歩踏み出したならあたし達も続かなきゃ」
自分も渚ロスだったけど、とちゃんと言うところも良い。

ミナミも長屋の様子を気にしていて、人が済んでるっぽかった、寂しいねと言う。
それを聞いてつい長屋に足を向けるマキ。
そこで切ないまま終わらせず、渚たちがいるという展開がこの漫画らしくて好きだ。
「あんな劇的な別れ方しておいて、戻ってきたなんて言えるわけない」
と言う渚にちょっと笑ってしまった。
色んな要因が重なって一時的にまた非常勤で先生としてカムバックすることになったが
その要因のひとつにお母さんの策略があるのも面白い。
アラタさんにはマキがいないと料理作っても張り合いがないなんて本心を言っている渚がなんだか可愛い。
「オレはおまえの望むようにはしれやれねえよ」
「ただ気持ちを少しはゆだねてほしいだけ」
という前と同じやり取りなのに、気持ちが全然違う。

渚がハルバルで待っててくれるから寂しくないというマキ。
「あたり前だろ? マキはオレの家族なんだから」。
江田ではなく名前呼びになっていて、関係がより深くなって
2人で同じ家に「ただいま」と言って帰っていく。
世間一般の異性同士での結婚という関係でなくても
本当に2人は家族だし、理想の関係だと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: コミック
感想投稿日 : 2021年5月4日
読了日 : 2021年5月3日
本棚登録日 : 2021年5月4日

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