ブルバキ: 数学者達の秘密結社 (シュプリンガー数学クラブ)

  • シュプリンガー・フェアラーク東京 (2002年12月1日発売)
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ニコラ・ブルバキの数学原論については、学生時代に図書館で見た事があるが、最も難しい数学書だという噂で、いつかこんな数学書が読めたらいいな程度に思っていた。
本書の序でも明かしているが、「ブルバキ」というのは20世紀初頭にフランスを中心とする優秀な若手の数学者たちが作り上げた、架空の人物である。元々は、当時のフランスの高等教育における解析学の教科書が古すぎて満足な物がなかったため、新しい教科書を作るのが目的だった様だ。しかし、それは数学の基礎から問い直して編纂するという大事業にまで発展し、特に1930年〜1950年にかけて、世界の数学に影響を与える物となった様である。
「ブルバキ」のメンバーには、アンドレ・ヴェイユ、アンリ・カルタン、ジャン・デュドネといったそうそうたるメンバーが顔を揃えている。それらの数学者たちが作り上げた、数学の秘密結社とでも呼ぶべき組織について、本書はその目的から当時の状況、それをとりまく様々な人物や団体、中等教育や高等教育に与えた影響まで、広範囲にわたって述べられている。
ブルバキの魅力は、そのレベルの高さと秘密主義にある様に思う。最近、数学セミナー10月号で元ブルバキメンバーのピエール・カルチエ氏が訳者の高橋先生にブルバキについて語る記事を読んだ。ブルバキは今でも存命ではあるが、残念ながらほとんど昏睡状態であるらしい。本書は、10年くらい前に興味本位で読んだと思うが、この記事を読んで再読を思い立ち、改めてブルバキの影響の大きさを知る事が出来た。
しかし...、こういう組織を作る事が出来る時代はもう終わってしまったのだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 数学
感想投稿日 : 2013年10月20日
読了日 : 2013年10月19日
本棚登録日 : 2010年5月13日

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