自分のなかに歴史をよむ (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房 (2007年9月10日発売)
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本棚登録 : 982
感想 : 93

本は脳を育てる:https://www.lib.hokudai.ac.jp/book/index_detail.php?SSID=5071
推薦者 : 中村 重穂 所属 : 国際連携機構国際教育研究センター

何年かにわたって「一般教育演習」や「多文化交流科目」で異文化間コミュニケーションの理論と実践といった類いの授業を展開してきたが、この本はそうした授業の設計思想を作る上で常に座右に置いていたものである。この本が出たとき、ある夕刊紙の書評が「これは真に感動的な本である。」と書いた。「感動的」ということばが適切かどうかは分からないが、「目からウロコが落ちる」という感覚が得られる本ではあると確かに思う。内容は、少年時の修道院生活、大学時代の上原専録との出会い、ヨーロッパ留学生活等々著者の体験談が多いように見えるが、その根底で著者はヨーロッパ(ドイツ)で感じた違和感とそこから教えられたことを鋭く問い返し、ヨーロッパという世界を肚の底から分かろうと真剣に考え抜いたことが読み取れる。その徹底ぶりは鬼気迫るものがあるといってよいであろうが、文章にはそのような雰囲気は微塵も感じられない。「『分かる』ということは『自分が変わる』ことだ」という師・上原専録の教えを自らに体現して生まれた、「(異)文化を理解するとはどのようなことか」に手がかりを与えてくれる優れた本である。高校生向けに書かれた本ではあるが、大学生以上のあらゆる年代の人々にも感銘を与えるに違いない。

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感想投稿日 : 2021年12月13日
本棚登録日 : 2019年12月12日

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