文章を速く書けるようになるための方法を扱う本ですが、スピード以前に、文章を書くことに苦手意識をもっている人にも、お勧めできる本です。本書で示されている方法は、「読み手にきちんと伝わる文章が書けない」、「どう書いていいのか書き出しの時点からつまづいてしまう」といった悩みを解決する方法でもあるからです。
文章を書き始める前に、まず素材を集めること。著者が提唱している文章術の基本はここにあります。全編通して、この基本に従い、素材集めのやり方、実際に文章にしていく手順、最後に著者が実際に行った仕事の事例が示されています。
先に素材を集めるということは、事前の準備をしっかりしておくということです。
単純なことのようにも思えますが、素材を集めるためには、文章を書く目的にきちんと向き合わなければなりません。そうでなければ、的外れな素材しか集まりませんから。
素材さえあれば、これらを組み合わせていくだけで、文章はほとんど出来上がります。この方法なら、文章を書いている最中に、資料探しをするために作業が中断することもありません。文章を書くことだけに集中して、一気に書き上げられるという訳です。
色々な方法を取り上げるカタログ的な構成ではなく、「素材」という部分を軸にして、文章を書きあげるまでの作業順序のとおりに並べられた、筋の通った構成になっています。読みやすい本でした。本書が読みやすく仕上がっているということ自体が、本書の方法論の価値を示していると思います。
ちなみにこの本は、素材集めを抜きにすると、5日(およそ 30時間)で書かれたそうで、確かにスピードも上がりそうです(慣れの部分も大きそうだけれども)。
- 感想投稿日 : 2018年1月6日
- 本棚登録日 : 2017年12月1日
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