ものすごい!
映画でこういう感動は味わったことがありませんでした。観終わってしばらくしてもなお興奮がさめやりません…終盤からのスピード感、緊張感、不安感はとても良かったです。
映画全体を通じて、観客を作品のなかに引きこんでいく強い効果を感じました。それはいろいろな演出によるものだとは思いますが、個人的にはカメラワークが印象的でした。状況を客観的な立場から映すことはあまりなく、基本的には主人公の視点から映し出されていたように思います。とくに踊りのシーンを映す仕方は、基本的に観客目線ではなく、(観客が)自分もその舞台に参加しているような気にさせる踊り手目線のものでした(とはいえ、実際踊ったことはありませんが)。そのようにして観客は主人公の立場にみずからを投影して、主人公と同じような恐怖や緊張を体験できるようになっているように思いました(ただ、絶叫マシーンに似たような要素もあるので、そういうのが苦手な方は酔ってしまうかもしれません)。
また、そうした主人公の描かれ方に加えて、「自らの殻を破ることができずに苦悩している」という主人公の人物設定が作品の魅力を倍増しているように思います。ミヒャエル・ハネケの『ピアニスト』の主人公――実直で真面目な性格でありながら、その心の奥底に「悪魔」を抱えてしまっていて、その「悪魔」の作り出す欲望や嫉妬のような感情にどう向き合ったらいいのか当惑している――に似ているところがあるように思います。なんだか末恐ろしいものではありますが、ある意味誰しも共感できるところでもあり、私も、自分のなかにもいるかもしれないその「悪魔」のことを思ってしまいました。
- 感想投稿日 : 2011年11月17日
- 読了日 : 2011年11月17日
- 本棚登録日 : 2011年11月17日
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