「密息」で身体が変わる (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社 (2006年5月24日発売)
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筆者は尺八奏者

■密息
尺八に伝わる呼吸方法
日本の身体意識・身体文化に密接に結びついている

尺八の音に魅せられて海外の音楽大学、大学院へ進学
胸式呼吸、腹式呼吸、逆腹式呼吸、循環呼吸とマスターするも、
尺八の演奏にはどの呼吸法もそぐわない

尺八は菅内の容量が非常に大きく、
世界的にも稀なほど大量の息が必要な楽器
虚無僧寺にて教わった奏法が密息

秘密の技法という意味ではなく、
「息をひそめる」、息を自他にわからせないようにするという意味

■密息の特徴
・大量に息が吸える
骨盤を後ろに倒すほど、吸える量が増える

・一瞬で吸える
鼻から吸うのが楽で、しかも音もなくできる

・強い安定感
骨盤が後ろに倒れているため、安定感がある
身体が動かず、安定し、吸う音がしないため静止感がある

・着物文化とのつながり
着物を着ると自然とできる呼吸
着物は着崩れないために、常に腹を張るようにしている必要がある
その状態での呼吸法が密息

・昔の日本人はみんな密息だった
密息でなければ演奏が難しい尺八の曲が非常に多い

■密息の方法
・腹を張り出したまま、吐いて、吸う
腹を張り出してその形を変えないこと
外の筋肉を動かさず、横隔膜だけを動かす

・力を抜く
へその下、下腹のみに力を入れること

・呼吸をしながら周囲に注意を向けてみる
身体は動かない、世界が静止したように見える
感覚が鋭敏になる、音・ものの動きを明瞭に感じられる

・骨盤を後ろに倒す(上級)
椅子に座って、腰を背もたれにつける感じ
首の付け根をやや前に出す感じ
力を入れないこと

・鼻の奥を広げて、目頭から吸う

■骨盤の位置と日本人
・日本人はかつて骨盤が後ろに倒れていた
日本の伝統的な家屋、農作業では後ろに倒れている方が自然な動作
現在は西洋風の家屋、生活で骨盤が立ち気味であるが、
西洋人ほどに立ちきってはいないため、精神的にも不安定となる

日本では国風文化ができた頃から床座の文化
立ち座りを繰り返すことで足腰が鍛えられた
椅子が普及した現在でも、お酒を飲むときなど床座が落ち着く

帯の文化は、腹部を抑え密息と深い結びつきがある
密息ができれば着崩れることがない

西洋人は身体の外側の筋肉が発達していて、骨盤も立っている
腹式呼吸は本来西洋人のための呼吸法

伊東浩二「日本人は他の人種と比べて、
最も骨盤が後ろに倒れている民族」
黒人の骨盤は前傾していて、
それがスプリントのスピードを生み出している

ナンバ歩きは加速には向いていないが、
山道・田んぼの多い悪路では安定する歩法
重心の上下動がない

骨盤が後ろに倒れているため、のこぎりなどを"引く"文化である
"しゃがむ"文化、西洋人はしゃがむことができない

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文化
感想投稿日 : 2011年12月21日
読了日 : 2011年12月20日
本棚登録日 : 2011年12月20日

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