『連続幼女誘拐殺人事件の捜査で進む刑事佐伯』
『虚無となり新興宗教に出逢い己の目的を遂行する為に狂い、少女連続殺人者として堕ちて行く犯人』
この二つの視点で物語は進む。
一章一章が短いので、片Partの記憶が薄れない内に軌道修正を繰り返す事が出来る。とても読み易い。
さて、この大まかな流れを理解してから私が行うひとつの儀式みたいなもの...トリックや動機は置いといた着地点のみの大雑把な推理を始める。
....ミステリ好きであれば比較的容易に想像ができる、悪く言えば王道もしくは邪道なオチを。そしてそれを裏切られたいのだ。
結論を言えばーこうであってくれるなよーが的中してしまったのだが、個人的には本作品は事の顛末よりも貫井徳郎の文才を楽しむ一冊に感じた。
クールで冷徹 周りに誤解されやすいが内に秘めたる熱い心の持ち主、まるでジャンプの主人公キャラな佐伯一課長。それを認められずくやちくてハンカチ噛みながら意地悪するメンズ蔓延る男職場。
暗黒のベースはあれども、ジワジワと狂気に堕ちていく犯人。
20年ほど前の作品ですからね、話のディテールよりも佐伯と犯人 被害者遺族(今回はそこまでプロットに組込まれていませんが)そしてモブ達の心情を短い章の中で濃密に感じる事が出来るのが魅力的。
細かいことを言えば、新興宗教側の脇役達の扱いが雑なのが勿体ない。その後が謎に包まれる物語の脱落者達。有耶無耶にするのは宗教団体の不気味さの演出にはもってこいだが、槍を振り上げるだけで降ろされないもどかしさを感じた。
そして司摩の行動。熱弁するとネタバレにもろ顔ツッコミせざる得ないので省くが....彼の正義とはなんなのだ。無駄に行動力のある陰キャのイメージで止まってしまったぞ。
うーん、バッドエンド愛好家として最後の一行は好きなんだけども、、不完全燃焼だなぁ。
- 感想投稿日 : 2021年6月23日
- 読了日 : 2021年6月23日
- 本棚登録日 : 2021年6月23日
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