岡本喜八監督の映画版を先に見ていたが、映画が思ったよりも原作に忠実だった。映画版・原作ともに登場人物が多く、しかも同時進行でいろいろなことが起きる。映画版を観たときは、時系列や人間関係を上手に整理し、テンポ良く場面を切り替えていく手つきに感心したのだが、そもそも原作がそういう作品であることがよくわかった。
両者の違いは、作り手の視点である。映画版はテンポの良さがある種のドライさにつながり、登場人物をどこかつき離している。事件全体を、いまの視点から俯瞰してとらえている。一方、原作は文体がエモーショナルで心理描写も多く、登場人物に寄り添っている。これは岡本喜八と半藤一利の資質の違いであるとともに、原作がナラティブが元になっていることに起因しているのだろう。
映画版は、毎年8月に見返すようにしているのだが、原作も折に触れて読み返したい。
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- 感想投稿日 : 2022年7月29日
- 読了日 : 2022年7月29日
- 本棚登録日 : 2022年7月29日
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