イベントでまはらさんのお話を伺う。
ペンネームは三月三日生まれ、古事記の作中に出てくる桃が邪気を払うという意味合いがあるとのこと。作業場所では椅子がわりにバランスボール、毎日午前中に創作活動をなさっているとのこと。10年ほど同人誌で鍛えられて40代でデビューなさったとのことで、努力家で言葉を選びながら誠実に答える姿がとても素敵でした。
こちらの作品は実際に取材を綿密に行ったというお話でした。
コンピューター研究部、ものづくり研究部って私の頃はなかった、部活動。キラキラして見える。おじいちゃんの工場の動く機械や飛び散る火花を見るのが好きだったという心が主人公、<高校生ものづくりコンテスト福岡>大会に向けて部員のみんなと切磋琢磨を重ねた時間を描いている。切削時に出る鉄くずであるキリコには職人の腕が現れる、旋盤は「削る」「挽く」、ドリルで穴をあけるのは「揉む」、平面をかき削る時は「きさぐ」、ほんのちょっとの削るなら「さらう」とか「なめる」とか鉄の加工で言葉は変わるらしい。実践の前には理論、「何かに一生懸命になっとる時、それが本物かどうか、人は時々試されるんよ」という大山先生の言葉が襟元を正されるような気分になる。崎原先輩の「性差も能力」という助言に本人が勇気づけられ「ものをつくるのに男も女もない」という祖母の言葉に重ねる。自分の歩きたい道をひたすらに歩く姿を応援したくなる。
「機械にいい仕事させるのは人間やからね」という原口先輩の背中を眩しく見つめて心を寄せる様子も青春だなあと思う。北九州という工業の町に育った著者はモノづくりの話をかいてみたいと思って出来上がった作品とのこと。また北九州までドライブして工場萌えしてこよう。
- 感想投稿日 : 2023年10月8日
- 読了日 : 2023年10月8日
- 本棚登録日 : 2023年10月8日
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