鉄のしぶきがはねる

著者 :
  • 講談社 (2011年2月25日発売)
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本棚登録 : 378
感想 : 77

イベントでまはらさんのお話を伺う。
ペンネームは三月三日生まれ、古事記の作中に出てくる桃が邪気を払うという意味合いがあるとのこと。作業場所では椅子がわりにバランスボール、毎日午前中に創作活動をなさっているとのこと。10年ほど同人誌で鍛えられて40代でデビューなさったとのことで、努力家で言葉を選びながら誠実に答える姿がとても素敵でした。
こちらの作品は実際に取材を綿密に行ったというお話でした。

コンピューター研究部、ものづくり研究部って私の頃はなかった、部活動。キラキラして見える。おじいちゃんの工場の動く機械や飛び散る火花を見るのが好きだったという心が主人公、<高校生ものづくりコンテスト福岡>大会に向けて部員のみんなと切磋琢磨を重ねた時間を描いている。切削時に出る鉄くずであるキリコには職人の腕が現れる、旋盤は「削る」「挽く」、ドリルで穴をあけるのは「揉む」、平面をかき削る時は「きさぐ」、ほんのちょっとの削るなら「さらう」とか「なめる」とか鉄の加工で言葉は変わるらしい。実践の前には理論、「何かに一生懸命になっとる時、それが本物かどうか、人は時々試されるんよ」という大山先生の言葉が襟元を正されるような気分になる。崎原先輩の「性差も能力」という助言に本人が勇気づけられ「ものをつくるのに男も女もない」という祖母の言葉に重ねる。自分の歩きたい道をひたすらに歩く姿を応援したくなる。
「機械にいい仕事させるのは人間やからね」という原口先輩の背中を眩しく見つめて心を寄せる様子も青春だなあと思う。北九州という工業の町に育った著者はモノづくりの話をかいてみたいと思って出来上がった作品とのこと。また北九州までドライブして工場萌えしてこよう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年10月8日
読了日 : 2023年10月8日
本棚登録日 : 2023年10月8日

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コメント 3件

Manideさんのコメント
2023/10/08

ベルガモットさん、こんにちは。

三桃と書いて「みと」と読むんですね。

そこまで本を読めているわけではないので、まはらみとさん、初めて知りました。

イベントで作家さんのお話を伺うなんてことに参加したことないので、いつかそういうイベントにも参加してみたいな〜と思っていたところです。

また、読んでみたい本が増えました(^^)

☆ベルガモット☆さんのコメント
2023/10/09

Manideさん、おはようございます。
アイコンはハロウィン仕様だそうすね(^o^)
コメントありがとうございます!そうなんです、「みと」と読むそうです。
実は私もこのイベントで知りました。福岡在住の児童文学作家さん三名の座談会で、和やかな雰囲気でした♪図書館の会議室でなんと無料!
Manideさんがレビューなさった、北九州舞台にした『コンビニ兄弟』も読みたいのですが、予約60名待ちで人気です。
読みたい本がどんどん増えて積読状態、何とか解消したいでーす

Manideさんのコメント
2023/10/09

おぉ〜、福岡在住の作家さんなんですね、
イベントいいですね、面白そうです。

しかし、60名待ちはすごいですね、予約が多くなると保持数も増やしていくんでしょうが、それでも1年はかかりそうですね…
コンビニ兄弟は、もう少し待ってからですね、
きっと(^^)

私は図書館の予約枠は、常にいっぱいですが、どのタイミングで入ってくるかの予測が難しいですよね。予約している人の平均返却まで日数とか利用して、おおよその受け取り予定日がほしいところです。

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