世間で認識されているような人格者というイメージとはだいぶ違う、非常に人間臭いというか、煩悩と業の塊といったかんじの高畑勲と宮崎駿という二人の天才を、上手く御した鈴木敏夫という人物の回想録。
仕事をしない、宮崎駿に言わせると極度のナマケモノであるパクさんこと高畑勲にどうにかして作品を作らせるようあの手この手を使ってその気にさせる下り。
そして若手の才能に嫉妬し、俺ならもっとうまくやれる、と敵愾心をむき出しにし、ジブリ内でのウェイトが高畑監督に傾いてるのを感じるとむくれてボイコットなどする駿監督。
それぞれの作画監督に起用するスタッフを取り合ったり、ジブリ内も常に順風満帆で平和に運営し続けていたわけではなく、スポンサー探しや配給会社との関係、資金調達や興行成績など、鈴木敏夫プロデューサーがいかに暗躍していたのかが窺い知れる。
ジブリの歴史を読むたびに、やっぱりジブリブランドが確立して、国民的アニメ作家となり、ファンが定着して、毎回毎回邦画のトップを取るような興行成績に驚かなくなってからの、安定したジブリの話は全く面白くない。
若き高畑、宮崎、そして鈴木の三氏が、持てる力を常に120%注ぎ込み、全身全霊で絵を描き、次コケたらアウト、というような博打を打ち続け、そしてそれに勝ち続けた頃のヒストリーがわくわくして堪らなく面白いのだ。
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- 感想投稿日 : 2024年1月30日
- 読了日 : 2023年8月7日
- 本棚登録日 : 2023年8月7日
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