続 岳物語 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (1989年11月20日発売)
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感想 : 72
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昔、国語の問題集の本文で、岳物語や岳物語2が使われていたのを記憶している。
岳は、自分というものをちゃんと持っていて、自分で考えて、やってみて、どんどん進んでいける強くて楽しい子だ。
岳を取り巻く人たちもみんなユニークで、頭でっかちよりも自分で体験してつかみとっていく実力を大切にして生きている、という印象をもった。
人の魅力とは、その体験の厚みで輝きが磨かれていく。
そんな気がした。

親と子はすれ違って、距離が出来ていくけれど、そういうぶつかる経験があるから、他者の立場に思いをはせることのできる人間となるのだろう、と思う。
いつまでも時間や感情を共有することは難しい。
しかし、無邪気に笑いあえた時間というのは決して無駄ではなく、その人の人生を支える太い柱になるのだろう、と思う。

しかし、岳や椎名さんにとって、この現代はどういう風に見えるのだろう。
野田さんが生きていたら、なんというのだろう。
あまりにも幼稚な管理社会に成り下がり、すぐに「危ない」と様々なものを禁止し、縛りあい、安易に「ルール」を求め押し付けようとする。
岳のような生き方や育ち方と真逆の現代。
現代の方が進んでいる、とは私には思えず、本当の意味で人間の知性や能力を発揮できるのは、多少の危険も受け入れて体当たりしていく岳のような生き方・育ち方のように感じる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 9・文学
感想投稿日 : 2023年11月11日
読了日 : 2023年11月11日
本棚登録日 : 2023年10月30日

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