「油地獄」
漢字がかたいので、書き出しからしばらくは読みにくかったが、恋に落ちたあたりから面白くなってきた。
小歌にかけてもらった言葉を、繰り返し繰り替えし思い出して味わうあたりも、微笑ましかった。
不器用で話ができない貞之進との再会のお座敷は、空気は重たくて、読んでいる私まで息がつまりそうだった。
不器用な初恋、しかもプロを相手の初恋はうまくいくはずがない、と、ヒヤヒヤしながら読んだ。
初恋は囚われやすく、うまくいかず、一番苦しい。
油地獄。
身も心も灼熱に焦げて狂う、そんな感じだ。
「春の晩」
浮気な恋の香りが漂う作品だった。
特に京子は発情のフェロモンを出していて、原さんはもだもだと、残念でした、と思った(笑)
京子に「美しい顔ね」と繰り返す幾重は、私には若さや美しさを吸い取る妖怪のように、どこか気持ち悪く感じられた。
「恋山賤」
美しいお嬢さんに心が惑った万蔵の様子が面白い。
お嬢さん単独での山遊びだったら、面白いとは言えない結果になっていただろうけれど。
文章も美しかった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
9・文学
- 感想投稿日 : 2021年2月22日
- 読了日 : 2021年2月25日
- 本棚登録日 : 2021年2月22日
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