眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎

  • 紀伊國屋書店 (2007年12月12日発売)
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1997年のノーベル生理学・医学賞は「感染症の新たな生物学的原理の発見」に与えられた。プリオン(タンパク質性感染因子)である。それまで感染症の病原体といえば、ウイルス、バクテリアなどの生物(DNAもしくは、RNAを持ち、自らを複製するもの)であったが、プリオンはただのタンパク質、非生物であった。プリオンは、プリオンタンパクが、誤って折り畳まれたもの(タンパク質はアミノ酸を並べて折り畳んだもの)で、その誤りを正常なタンパク質に感化(配座感化)させることで増えていく。そして、これによって発症するのが、スクレイピー(ヒツジ)、BSE(ウシ)、クロイツフェルト=ヤコブ病(ヒト)などのプリオン病である。プリオン病は、プリオンタンパク遺伝子の変異で発症(遺伝型)するだけでなく、プリオンとの接触(上記疾病を発症した動物の危険部位を食す等)で※感染(変異型)するとされる。また、それらとは別に原因不明の発症(散発型)もあるが、「変異型」と「散発型」の線引きは非常に難しく、慎重な診断が求められる。
(プリオンのもっとも大きな特徴として、その不活化が難しいことがある。ウイルス、バクテリアであれば、そのDNA、RNAを破壊するような熱処理、紫外線処理で不活化できるが、プリオンは繊維性のタンパク質であり、熱、紫外線ともに強く、灰になっても感染力がある。)
未だに謎の多いプリオン、その異常は治療法の早期発見が待たれる。とはいえ、実はそもそも、正常なプリオンタンパクが、自分たちの体内でどんな役割を担っているのかが、まだ分っていない(プリオンタンパクを欠損したマウスはまったく異常なく生きる)。あらゆる哺乳類が持つプリオンタンパク、これはミステリーである。
※「感染」より「伝達」の方が適当といわれる。

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感想投稿日 : 2018年10月8日
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本棚登録日 : 2018年10月8日

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